(左から)Erika Murphy、紗羅マリー
 

ロンドンの歓楽街、ソーホーを舞台にした映画「ラストナイト・イン・ソーホー」は、60年代のカルチャーが詰まったサイコサスペンスだ。60年代に憧れながらファッションデザイナーを目指すエロイーズ(エリー)は、ロンドンの学校でファッションを学びはじめる。そんなある日、不思議な力を持つ彼女は、夢の中で60年代にタイムスリップ。歌手になることを夢見るサンディという女性にシンクロする。その日以来、毎晩エロイーズはサンディを通じて60年代のロンドンを訪れるようになるが、そこで恐ろしい事件を目撃する。

監督は「ショーン・オブ・ザ・デッド」(2004年)、「ベイビー・ドライバー」(2017年)など、映画愛に満ちた作品を発表してきたエドガー・ライト。サブカルチャーにも精通しているライトだけに、本作も楽しみどころが満載だ。

そこで、音楽やファッションに詳しい2人の女性、紗羅マリー(LEARNERS)とErika Murphy(Luby Sparks)を招いて「ラストナイト・イン・ソーホー」の魅力について語り合ってもらった。共通点が多いようで、正反対なところもあるという2人の感想は……?

 

主人公エリーと同様に、周囲から浮いていた少女時代

――まずは映画の感想から伺いたいのですが。紗羅さんはいかがでした?

紗羅マリー(LEARNERS)「私、ホラーがめっちゃ苦手なんですよ」

Erika Murphy(Luby Spatks)「そうなんですか(笑)!?」

紗羅「もう、子供の頃からダメなんですけど、この映画は60年代の音楽とかファッションが主軸にあるって聞いていたのでチャレンジしてみました。そしたら、内容がしっかりしていて本当におもしろかったです。それに怖くて〈あーもう、ダメ!〉ってなりそうなときに素敵な音楽が流れてくるので助かりました(笑)」

――音楽で乗り越えられた(笑)。Erikaさんはいかがでした?

Erika「私は逆にホラーがめっちゃ好きなんですよ」

紗羅「えーっ!」

Erika「ホラーって、結構、観ているうちに結末がわかっちゃうんですけど、この映画は最後まで読めなかった。うぶな女の子が成長していく物語なのかな?と思いきや、良い意味でだまされましたね。いままで観たホラーとは全然違うテイストでおもしろかったです」

「ラストナイト・イン・ソーホー」予告編
 

――お二人ともストーリーに強く惹かれたみたいですね。

紗羅「女の子はみんな自分が好きな世界があると思うんですけど、エリーは60年代の世界が好きだった。そのおかげで周りから浮いちゃう感じもわかりました」

――紗羅さんにもそういうことがあったんですか?

紗羅「ありましたね。学生の頃、周りはジャニーズとかモーニング娘。が好きだったんですけど、私は美空ひばりを聴いたりしていたんです」

――それは浮きますね! ご両親の影響ですか?

紗羅「いや、パパはロックを聴いているし、ママはプリンスのファンでした。昔、祖父母が裕福だった頃、家にカラオケルームがあって、夜になるとおじいちゃんとおばあちゃんがお酒を飲みながら2人で歌っていたんです。そこでおばあちゃんが美空ひばりを歌っていて、それを聴いて好きになった」

――映画でロンドンに出てきたエリーが、キンクスを聴いていてクラスメイトから〈年寄りが聴く音楽〉ってバカにされますけど、それと似たような状況ですね。

紗羅「私は学校では隠していましたけどね。わざわざ浮く必要もないかなって思って」

Erika「私は兵庫の田舎で育ったので、ハーフっていうだけで完全に浮いていて、それで結構いじめられたんです。でも、〈絶対負けない!〉と思って、ジャニーズについて勉強して周りに適応しながらも自分の好きなものを追いかけていました」

――その頃はどんなものにはまっていたんですか?

Erika「私、ジョーン・ジェットが大好きで、兵庫のジョーン・ジェットになりたかったんですよ」

紗羅「かっこいい(笑)!」

Erika「あとクラッシュとかセックス・ピストルズとか、母親が好きな音楽をめちゃくちゃ聴いていましたね。高校生くらいになると、そういうファッションもするようになって」

――エリーは自分の部屋を完全に60年代の世界にしてるじゃないですか。Erikaさんの部屋もそんな感じ?

Erika「私も好きなバンドのポスターとかを壁一面に貼っていました。壁の隙間をなくしたい!みたいな感じで。どこを見ても自分の好きなものが目に入るようにしたかったんです」