Photo by Andi Elloway

コロナ禍の世界で求められたのは4つ打ち?

2020年、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大によって、クラブやライブハウスは営業が困難になった。ここ日本では少しずつ再開する店が増えてきているものの、先は見通せない状態だ。フロアを沸かすDJ、回りつづけるミラーボール、夜通し踊りあかすオーディエンスたち……。安全なナイトクラビングは、いつになったらできるようになるのだろう?

そんな〈踊れなくなってしまった年〉に軽快な4つ打ちディスコ・ナンバーがいくつもヒットしたのは、なにか意味ありげなことに思えてくる。もしかして、世界の人々は〈コロナのことなんて忘れて思いっきりダンスしたい!〉と思っているんじゃないか、と。

 

“Dynamite”に“Say So”、ディスコ調のヒット曲

たとえば、説明不要のヒット・ソング、BTSの“Dynamite”。太くうねるベースとヘヴィーなキックが生む力強いグルーヴは、なにものにも代えがたい魅力がある。

BTSの2020年作『BE』収録曲“Dynamite”

“Dynamite”のヒットの理由は、もちろん世界最高のエンターテイナーである7人の魅力があってこそだが、ド直球のダンス・ナンバーだったことも大きいだろう。4つ打ちは、ユニヴァーサルな音楽的言語なのだ。

そして、ドージャ・キャット“Say So”。甘いヴォーカルが魅惑的なこのディスコ・チューンは、全米チャート(Billboard Hot 100)で2位を記録。さらにニッキー・ミナージュが参加したリミックスが1位に輝いたスマッシュ・ヒットだ。インドネシアのレイニッチ(Rainych)による日本語カヴァーも、大いに話題になった(この原稿を書いている時点で、YouTubeにてなんと19,000万回も再生されている)。

ドージャ・キャットの2019年作『Hot Pink』収録曲“Say So”

もうひとつ例を挙げるなら、デュア・リパの“Don’t Start Now”だろうか。

デュア・リパの2020年作『Future Nostalgia』収録曲“Don’t Start Now”

この曲を含むアルバム『Future Nostalgia』は、80年代のレトロ・フューチャーなカルチャーにオマージュを捧げたものだった。また、同作のリミックス・アルバム『Club Future Nostalgia』は、コロナ禍の世界に架空のクラブを作り上げたことで重要な意味を持っている(マーク・ロンソンが5月に発表した『Love Lockdown: Video Mixtape』も似た試みの作品だった。ちなみに、その両方に星野源が参加している)。

他にも、カイリー・ミノーグの新作はその名も『Disco』だったし、レディー・ガガが『Chromatica』でダンス・ポップに立ち戻ったことも印象的。ジェシー・ウェア『What’s Your Pleasure?』やロイシン・マーフィー『Róisín Machine』のような強力なディスコ・アルバムは、年間ベスト・チャートを賑わせている。そう考えると、松原みき“真夜中のドア〜Stay With Me”が今年世界的なスタンダードになったのも、あのスクウェアなビートの魅力ゆえでは……?

ロイシン・マーフィーの2020年作『Róisín Machine』収録曲“Murphy’s Law”

こういったディスコ百花繚乱の状況がポップ・シーンに生まれたのはもちろん、ダフト・パンク『Random Access Memories』(2013年)やマーク・ロンソンとブルーノ・マーズの“Uptown Funk”(2014年)、あるいはウィークエンドの近作などがヒットし、種を蒔いてきたからこそだろう。

 

80sディスコをよみがえらせたタキシード

と、ここまでに挙がっていない重要なアーティストがいることに気づいたあなたは鋭い。そう、タキシードだ。あふれんばかりの愛とともに80sブギー/ファンク/ディスコを最新の音楽としてよみがえらせたのは、タキシードのメイヤー・ホーソーンとジェイク・ワンの2人にほかならない。

誰もがディスコ・サウンドを欲し、4つ打ちを求めた2020年の暮れ、なんとも素晴らしいタイミングでタキシードのベスト・アルバムが届けられた。タワーレコード限定の2枚組『The Best Of Tuxedo』である。

TUXEDO 『The Best Of Tuxedo(タワーレコード限定)』 BBQ(2020)

 

〈タキシードといったらこれ〉な定番と新曲を収めたディスク1

タワーレコードが企画し、こだわりの選曲を行うベスト盤シリーズ〈TOWER RECORDS PREMIUM〉の第1弾であるこの『The Best Of Tuxedo』。タキシードのキャリアにおいて初のベスト盤で、入門者にとってもデビュー当時からのファンにとっても必携のアイテムだろう。

『The Best Of Tuxedo』トレイラー

ディスク1は、『Tuxedo』(2015年)、『Tuxedo II』(2017年)、『Tuxedo III』(2019年)という3枚のアルバムから、シングルや人気曲が網羅的に収録されている。冒頭4曲は〈タキシードといったらこれでしょう!〉という“Do It”“Number One”“So Good”“The Right Time”が並んでいて、とにかくニクい。最高の〈つかみ〉にやられたら、あとはなにも考えず、心地よいリズム&グルーヴに身を委ねるのみである。

『The Best Of Tuxedo』収録曲“Do It”

1枚目の締めくくりは、“Doin’ My Best”。これは今回正式にリリースされた新曲で、世界に先駆けて本作に初収録された。ハンド・クラップでスタートする導入は“Do It”へのセルフ・オマージュのようだが、実はファースト・アルバムを制作中だった2011年に作られたものなのだとか。ループ再生でそのまま“Do It”に戻れば、エンドレス・リピートまちがいなしだ。

『The Best Of Tuxedo』収録曲“Doin’ My Best”

 

クリスマス・ソングも! レア曲満載のディスク2

そして、本作が以前からのファンにとっても見逃せない理由は、ディスク1の後半とディスク2に大量のレア・トラックが収録されているからだ。

ディスク1の13曲目“Own Thang feat. Tony! Toni! Tone!”と14曲目“Get The Money feat. CeeLo Green”は、ともにアルバム未収録曲。前者は『Tuxedo III』のタワーレコード限定盤に入っていたものなので、アナログ派や輸入盤派、配信でアルバムを聴いているリスナーは耳にしたことがないかもしれない。

『The Best Of Tuxedo』収録曲“Own Thang feat. Tony! Toni! Tone!”

ディスク2は、なんと全曲初CD化という驚きの内容。それぞれの楽曲についての解説は大前至によるライナーノーツに詳しいので、ぜひそちらを読んでほしい。

1曲目はタキシードの大先輩(元ネタ?)、ザップとのフレッシュな共演曲“Shy (with ZAPP)”で、7インチ・シングルとして発表されたもの。他には12インチ盤にのみ収録されたリミックスなどを多数収録しており、なかでもケイトラナダによる“The Right Time”によるリミックスはなかなかおもしろい。彼らしいホコリっぽいブレイクビーツとタキシードの80s感が絶妙に混ざりあっているのだ。

ディスク2のラストは、いまの季節に聴きたい“Wonderful Christmas”。〈タキシードにクリスマス・ソングなんてあったの?〉と驚くこの曲は、12月になると必ずどこかで耳にするポール・マッカートニーの名曲のタキシード・ヴァージョン。2014年にデジタル限定でリリースされていたものなので、知られざるカヴァーかもしれない。聴いているとなんだか、クリスマス・ツリーのてっぺんでミラーボールが回っているイメージを思い浮かべてしまう。

『The Best Of Tuxedo』収録曲“Wonderful Christmastime”

というわけで、BTS“Dynamite”やドージャ・キャット“Say So”に心を躍らせたこの一年の締めくくりは、自宅にミラーボールを設置し、(近隣の迷惑にならない程度の)大音量でこのCDをかけ、ソーシャル・ディスタンシング・ディスコで踊りあかすしかない。

 


RELEASE INFORMATION

TUXEDO 『The Best Of Tuxedo(タワーレコード限定)』 BBQ(2020)

仕様:国内盤CD2枚組
リリース日:2020年11月27日
品番:BBQ116CD
価格:2,700円(税抜)

TRACKLIST
Disc 1
1. Do It
2. Number One
3. So Good
4. The Right Time
5. Watch The Dance
6. 2nd Time Around
7. Fux With The Tux
8. Take A Picture
9. The Tuxedo Way
10. Vibrations feat. Parisalexa
11. On A Good One
12. Toast 2 Us feat. Benny Sings
13. Own Thang feat. Tony! Toni! Toné!
14. Get The Money feat. CeeLo Green
15. Doin’ My Best

Disc 2
1. Shy (with ZAPP)
2. Watch the Dance (M + M 80s Classic Mix)
3. Right Time (M + M 80s Classic Mix)
4. So Good (M + M 80s Classic Mix)
5. The Right Time (Kaytranada Remix)
6. Watch the Dance (Battlecat Remix)
7. The Right Time (Jean Tonique Remix)
8. Thank You
9. July (Sly & Robbie’s Dub)
10. Vibrations (Vitamin D’s New Jack Swing Remix)
11. Wonderful Christmastime