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コラム

パイングローヴ(Pinegrove)、USインディーで人気を博す沁みメロバンドの魅力とは?

新作『11:11』までの歩みと背景に迫る

Photo by Balarama Heller

エモやオルタナティブカントリーに跨る音楽性、心を打つ旋律、文学的な歌詞……。熱狂的なファンが多数いる米ニュージャージーのバンド、パイングローヴ。いまやUSインディーシーンを牽引する存在である彼らが、2年ぶりの新作『11:11』をラフ・トレードから発表した。より研ぎ澄まされたメロディーとバンドアンサンブル、さらに政治性や社会性を深めた歌詞がすでに高い評価を得ている本作のリリースを機に、Mikikiは彼らがどんなバンドなのか、その歩みを再確認する。パイングローヴが『11:11』に至るまでのストーリーと新作の尽きせぬ魅力について、音楽ライターの山口智男が綴った。 *Mikiki編集部 

PINEGROVE 『11:11』 Rough Trade/BEAT(2020)

 

活動休止と自主リリース――2018年の復活劇

沁みメロ、美メロという言葉とともに、ここ日本でも熱心なインディーロックファンの間で注目を集めているニュージャージー州モントクレア出身の5人組、パイングローヴ。彼らはもちろん、米英のインディーロックシーンにおいても人気を博しているが、何よりもその草の根的な根強さを物語るのが2018年の復活劇だ。

2017年11月から約1年間、活動を休止し、レーベルとの契約もなかったパイングローヴの再出発は、自主リリースという少々、心許ないものとなってしまった。それはエモリバイバルのブームを代表するボストンのインディ―レーベル、ラン・フォー・カヴァーから2016年2月にリリースしたセカンドアルバム『Cardinal』が評価され、一躍シーンの最前線に躍り出た新進気鋭のバンドにとって、当然、大きな痛手になるだろうと思われた。

2016年作『Cardinal』収録曲“Old Friends”

しかし、パイングローヴが2018年9月にサードアルバム『Skylight』を、Bandcampを通じてリリースしたところ、彼らのシーン復帰を祝福するようにファン、プレスどちらからも大歓迎され、リリース後のツアーもソールドアウトが続出。活動休止が痛手になるどころか、逆にファンの飢餓感を含めたパイングローヴ熱を煽る結果となったところにバンドの根強い人気が窺える。

2018年作『Skylight』収録曲“Intrepid”

 

ラフ・トレードと契約しヒット作となった『Marigold』

10代の頃からさまざまなバンドで活動を共にしてきたエヴァン・スティーヴンス・ホール(ボーカル/ギター)とザック・レヴィン(ドラムス)が2010年に新たに始めたパイングローヴは、ニュージャージーの多くのインディ―バンドがそうだったように自宅の地下室で行うDIYライブから活動をスタートさせ、徐々にファンベースを築いていった。彼らがその後、インディ―シーンで脚光を浴び始めたことはすでに書いたとおりだが、前述したバンドの復活劇と、それが物語る人気に可能性を見出し、新たに契約を申し出たのがイギリスの老舗インディーレーベル、ラフ・トレードだった。

2020年1月、パイングローヴがラフ・トレードからリリースした4作目のアルバム『Marigold』はビルボードのUSトップロックアルバムチャートの25位を記録する他、複数のチャートでパイングローヴ史上最高の成績を残すヒットとなった。

2020年作『Marigold』収録曲“Phase”
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