1963年にアナログ・ステレオ録音され、旧東ドイツでのみLPで発売された幻の名盤が世界初SACD化(CD化も初)された。ライプツィヒはバッハが楽長として赴任した最後の地で、19世紀にバッハ作品が人気を失った時代にも、その演奏伝統は脈々と受け継がれてきた。戦後、西側では各地の演奏様式が混合し、グローバル化が進んだが、東独は文化的に言わば鎖国状態にあり、ライプツィヒでの蒼古な音色による感情豊かなバッハ演奏が守られたのである。しっとりと落ち着いた響きと清廉なアンサンブル、あくせくしない格調の高さ。こうしたバッハは現代では耳にし得なくなっただけに、極めて貴重な復刻と言えるだろう。