(左から)ワタナベイビー、小宮山雄飛

90年代半ばの下北沢界隈からメジャーシーンへと飛躍し、ヒットチャートを彩る音楽とは数歩距離を置いたマインド、キャラクター、アティテュード、スピリットその他諸々で、ひとつのムーブメントを起こしたアーティストたち──と言って思いつく名前はいくつかあるが、そのうちのひとつにホフディランも挙がるだろう。

96年にデビューして、2002年に活動休止。ワタナベイビー、小宮山雄飛はそれぞれソロ活動を展開しながら、2006年に再始動。以降、ペースは緩めながらも独自のポップネスを、やるときゃガツンと届けてきた。

そんな2人がいま、とても元気だ。ライブ活動がままならない昨今にあってそう言い切れるのも、このたび届けられた約5年ぶりのアルバム『Island CD』がすこぶる熱く、楽しく、人懐っこい空気を放っているからにほかならない。実際のところの2人の様子はいかがなものかと、さっそく直接会いに……いけないので、モニター越しに語らっていただいた。

※このインタビューは2022年9月25日(日)発行予定の「bounce vol.466」に掲載される記事の拡大版です

ホフディラン 『Island CD』 TOWER RECORDS LABEL(2022)

 

雄飛に任せとけば大丈夫! コロナ禍なのに〈すごくよくなった〉ホフディラン

──前作『帰ってきたホフディラン』(2017年)は、〈帰ってきた〉ということで古巣ポニーキャニオンからだったり、いろいろな意味でお祭り感のあるリリースだったかと思います。そのへんの頃から現在に至るまでのお話をあらためて伺おうかと。

ワタナベイビー「前のアルバムの制作は、ちょうどホフディランのデビュー20周年とかぶってて、すごく盛り上げたいって気持ちがあったんですね。

それもあるし、僕個人の話では50歳を迎えたっていうね、そこでバースデーイベントなんかも組んだりしているなかで、バンドの調子もだんだんよくなってよくなってよくなっていて……そこでコロナが来ちゃった」

──残念ですよね。

ワタナベ「コロナ禍になり、大抵のバンドがピンチになって、ウチも当然ライブなんかできないしピンチになったんですけど、でもですね、“デジャデジャブーブー”って曲ができたことがすごくいいきっかけになって。

その次に雄飛くんの“風の誘いで”っていう曲が上がって来て、その2曲がすごくコロナ後のホフディランを決定づけるような、バンドがすっかりイイ状態になれたっていう。コロナ禍になってからがとくにバンドの内部というか、2人の状態がすごくよくなったっていう印象ですね」

──“デジャデジャブーブー”は、すごくワクワクする曲ですが、出来上がった背景には何があったんでしょうか?

ワタナベ「“デジャデジャブーブー”はね、自分でも何を書いてたかわかんないようなでき方で、いまだにわかんないような感じなんですけど、それがすごくよかったなあと思ってます。

実際はTV番組のエンディングテーマ(日本テレビ系『ぶらり途中下車の旅』)に使う、いわゆる仕事のオファーに応えようとして作った曲ではあったんですけど、でもなんで曲ができたのかよくわからないって感じ。いままで〈リアルに自分に起きたことを書く〉みたいな、そういう凝り固まった何かがあったりもしたんですけど、そんなことも関係ないし。

そういう不思議な曲だったんですけど、とにかく雄飛の反応がすごくよくてね。デモを送ったら〈イイネ!〉ってすぐ返ってきたから、勇気づけられましたね」

『Island CD』収録曲“デジャデジャブーブー”

──その“デジャデジャブーブー”に続いて“風の誘いで”ができた。

ワタナベ「この2曲は比較的同時期に出来上がってきて、“デジャデジャブーブー”で獲得したバンドのやり方みたいなのがそのまま当てはまって、すんなりできたって感じでした」

『Island CD』収録曲“風の誘いで”

──〈やり方〉というと、いちばんわかりやすいところでどんなところに違いが出ていたんでしょう?

ワタナベ「僕の側から言うと、曲作りがある程度のところまで行ったら、あとは雄飛に任せとけばもう絶対大丈夫なんだっていう信頼が確立されたところですね。

最後の仕上げなんかは彼にほぼ丸投げ的に任せるような形になってるんですけど、自分の意見が反映されるだろうか、自分が思ってる通りになるだろうか、というような葛藤ってのはもうなくて、雄飛に任せとけば大丈夫だっていう」