6人組のインストバンドhenrytennisが通算4作目となるニューアルバム『Bay Leaf and Singers』を完成させた。活動休止期間を経て、実に10年ぶりのアルバムとなった前作『Freaking Happy』で、2000年代のポストロックと2010年代のジャズを接続する稀有な個性を確立し、新章の扉を開いたヘンテニ。その後に起こったパンデミックやメンバーの離脱を経験しながら、それでも歩みを止めずに完成させた約2年半ぶりの新作は、リーダーの奥村祥人が昔から愛聴する70年代のプログレッシブロックやフュージョンにもう一度立ち返りながら、それを2020年代的な感覚で鳴らした作品に。艶やかな音色のサックスをはじめ、生演奏のアナログな質感を大切にしつつ、洒脱なコードワークや複雑なリズムアレンジはあくまでモダンであり、高揚感と解放感を併せ持ったポップミュージックとしてのインストゥルメンタルを見事に鳴らしている。この2年間も曲を作り続け、バンドを動かし続けた奥村に、新作の背景と創作の原点を訊いた。
コロナ禍でもバンド活動を継続した努力
――2019年に10年ぶりのサードアルバムを出した後、2020年からはコロナ禍でいろいろな状況が変わってしまったわけですが、奥村さんとして、またバンドとしてはどんな時間を過ごして、いつ頃から新作の制作に取り掛かったのでしょうか?
「前作を出した後はライブをやりつつ、自分はもともと多作家なので、〈次のもすぐ作れそうだ〉と思っていて、メンバーにも〈すぐ制作準備に入りたい〉と伝えてたんです。でもパンデミックが起きてしまい、それが難しくなってしまったので、新しい曲をスタジオで練る作業をずっとやっていた感じでした」
――リモートではなく、定期的にスタジオに入っていたわけですか?
「はい、毎週のようにスタジオには入っていたのですが、それは僕が無理やりそうしていたところがあって。あんまり会わないでいると心が離れていくというか、下手したら音楽そのものをやらなくなっちゃう人もいたりするので、そうなるのは絶対に避けたかったんですよね。こういう状況だからこそ、リーダーの自分が〈休もうか〉みたいになるのはダメだと思ったので、〈このバンドを継続的に続けていくんだ〉というスタンスをちゃんと見せるためにも、スタジオに入ることが必要だったんです」