コラム

伝説のベーシスト濱瀬元彦、ジャズ × テクノの名盤『Technodrome』を現代の制作環境でみずから再構築

濱瀬元彦『Technodrome Variant [New Mix in 2021]』

ジャズとテクノが融合した名盤が〈現代の制作環境〉で蘇る。

 伝説のベーシストにして音楽家であり、70年代後半に数々の名演奏を残した濱瀬元彦が、1993年発表した自身の作品『Technodrome』のMIDIデータと音源データをもとに、2021年の音源環境下で新たに再構築するという異色の作品をリリースする。その音楽性へのマーケット・音楽業界の理解が乏しかったが故、あえてシーンから距離を置いた70年代~80年代、スクールの立ち上げや執筆活動に軸足を移し、理論・楽典など複数の書籍を発表した。それらは他に類を見ない独自性と高度な内容であり、現代のジャズ系ベーシストから尊敬を集めると同時に、未だ大きな影響を与えている。

 そんな濱瀬氏が、2008年から2020年までLIVE活動を行なったユニット〈濱瀬元彦 E.L.F Ensemble〉を経て、〈濱瀬元彦〉名義で新たなLIVE活動を企図するにあたり、まずは我々に届けてくれたのが本作品となる。

濱瀬元彦 『Technodrome Variant [New Mix in 2021]』 Studio LUNG(2022)

 一般的なリマスター音源とは根本的に考えが異なり、当時のMIDIデータやオーディオデータは活かされているものの、現在の制作環境下における〈再構築〉と言うだけあり、その質感は大きく変異している。オリジナル音源と聴き比べてみると、まずは圧倒的な解像度と音圧に吃驚する。意識的に下げていたというベースソロも適正な音量に修正され、テクノサウンドに乗るインプロビゼージョンもクッキリ、溌剌としている。こと演奏に関しては当時より稀有であったソロセンスが光る。またシンセサイザーの音色なども演奏データを活かした上で差し替えられている。主観的な感想で言えば、本アルバムの音楽的普遍性はしっかりと根本に据えられているが、現在の作業環境・技術進歩、氏のサウンド的深化が加わることで、〈現代の音楽〉として昇華されているのは見事だ。

 2023年2月には、濱瀬氏に加えて、その門下生であり講師も務めるベーシスト清水玲、ラテン、ジャズからオルタネイティブシーンまでこなすパーカショニストの岡部洋一を迎えてのライヴも予定されている。この音源がライヴでどのような化学変化を見せるかもとても楽しみだ。

 


LIVE INFORMATION
濱瀬元彦『Technodrome Valiant』リリース記念 LIVE at JZ Brat
2023年2月7日(火)東京・渋谷 JZ Brat
1st 開場/開演:18:00/19:00~20:00  
2nd 開場/開演:20:30~21:30(入れ替え無し)
https://lung-inc.com/

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