SPOOL
原点に立ち返った新作が体現する、バンドであることの奇跡

 こばやしあゆみ(ヴォーカル/ギター)、ショウジスミカ(ギター)、安倍美奈子(ベース)、aran(ドラムス)から成る4ピース、SPOOL。昨年11月に配信された彼女たちの3作目『(image for) drawing on canvas』が、このたびCDでリリースされる。シューゲイザーの系譜にあるギター・サウンドで支持を集めてきたバンドで、結成は2007年。活動歴は15年以上に及ぶ。

SPOOL 『(image for) drawing on canvas』 TESTCARD(2022)

 「高校の軽音部内で結成して、当初はスピッツやTHE NOVEMBERS、Mr. Childrenなんかが好きで、コピーしたりもしていました。それから〈シューゲイザー〉というジャンルを知り、マイブラに衝撃を受けて……という感じ」(こばやし)。

 「初期は3ピースで活動していたんですけど、その時代は誰も寄せつけない雰囲気でしたね(笑)。でも、2018年にスミちゃん(ショウジ)が加入して、意識が外に向き、2019年にファースト・アルバム『SPOOL』をリリースできて」(安倍)。

 翌2020年には2作目『cyan / amber』を発表。だが、その制作はハッピーなものではなかったそうだ。

 「コロナ禍もあり、私が内省へと向かってしまったんです」(こばやし)。

 「当時のあみちゃん(こばやし)はだいぶ心を閉ざした感じで(笑)、私たちはそれに共感しようと演奏していました。でも、新作はもっと風通し良く作れました」(安倍)。

 『(image for) drawing on canvas』のサウンドはグランジ風だったりアーシーだったり多彩で、これまでよりキャッチーで人懐っこい。そこに平熱の温度で感情を切り取るこばやしの歌が響く。

 「〈歌〉にフォーカスを当てた作品だと思います。特に表題曲や“さめない”には、音楽をやる意味を込められた気がする」(こばやし)。

 「前2作よりも今作のほうが私たちらしい音楽だと思う。“In My Blood”とかデモを聴いたとき、すごくミスチルだなって(笑)。私たちのルーツを感じることが多かったです」(安倍)。

 「孤独を感じながら作ったセカンド・アルバムを経て、みんなでやれるありがたみがわかった。〈バンドって奇跡なんだ〉と感じたことで、原点に立ち返れた」(こばやし)。

 大きな達成感へと繋がった本作を経て、SPOOLはどんな未来を描いているのか。

 「いまも日本より海外のリスナーが多いんですけど、より積極的に国外で活動していきたい」(こばやし)。

 「バンドって永遠には続かない。だからこそ瞬間のありがたみを感じながら、活動し続けたいですね」(安倍)。

 

※3月18日にSPOOLは、5月13日(土)の新宿Nine Spicesでのライヴをもってドラマーのaranが脱退することを発表した。