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ギタリストとしての共通点と相違点

――Ichikaさんとイヴェットで言うと、やはり両手を使ったタッピング奏法が特徴的かと思うのですが、お互いのプレイの共通点をどのように感じていますか?

「まず僕らは2人ともクリーントーンで、ルートとメロディーとハーモニーとリズムを同居させながら弾くスタイルが共通してると思います。

もっと細かいことで言うと、フレーズ単位の終わりの部分を左手で終わらせてしまうと次のフレーズに移りづらくなってしまうので、それを解消するためにタッピングを使ってるんですよね。フレーズとフレーズの接着剤としてタッピングを使用してる感覚。そこが僕らに共通する独特な部分だと思います」

イヴェット・ヤングの2017年のパフォーマンス動画

――お2人とももともとピアノを弾いていたという共通点があって、それがギターの奏法にも影響していると言えますか?

「ギターに甘えないというか、〈ギターの作りがこうだから、ここがこうなるのは仕方ないよね〉と諦めることはせずに、あくまで〈曲そのもの〉を優先してるっていうのはあると思います。

例えば、ギターの構造的にはブレイクを入れるのが一般的だったとしても、曲のことを考えるとブレイクを入れたくないから、タッピングを使ってフレーズを繋ぎ留めたりする。ピアノをやっていたことによって、ギターを弾いたときに不自然だと思う部分が共通してるのかも」

――イヴェットはもともとバイオリンもやっていたし、〈ギターインスト〉というよりも、あくまで〈インスト〉として考えていて、そこが共通してるのかもしれないですね。逆に、お2人の違う部分についてはどう感じていますか?

「さっきも言ったように途中までは同じ方向を見て進んできたと思うんですけど、僕はその方向性をゴリゴリに推し進めてるタイプで、彼女はそこからもう少しギターライクに発展させていて、そこで分岐してる感じがします。

僕はピアノやオーケストラの影響も受けつつ、これまでのギターインストにはない曲を作りたい意識が強くて、ギターという楽器の制限された機能性に甘えずに、より拡張していくにはどうするかを考えてるんです」

――ソリストとしては近いけど、イヴェットはやはりコヴェットが活動の軸にあって、バンドになると当然アプローチは変わりますもんね。

「他の楽器があるかないかで全然違いますよね。彼女はアンサンブルの中での魅力的なフレージングとか、そっちを突き詰めてる部分もあると思うので」

――Ichikaさんにしても、コラボレーションだったり、Diosではそういう発想にもなるでしょうしね。

「そうですね。フレーズの作り方が全然違ってきます」

 

ギターならではの表現とアナログエフェクターへのこだわり

――イヴェットのフレージングの特徴はどんな部分だと思いますか?

「開放弦を交えたフレーズが多いですよね。僕もそうなんですけど、開放弦の組み合わせを試すためにチューニングを色々変えたりもしてて、そこは彼女も意識してる気がします。

あとは個人的な好みの部分で、前に〈一緒だね〉となった部分があるんです。開放弦を使うタイミングで気持ちいいなと思うのが、単音でスライドをして、それから開放弦を鳴らすのがすごく好きなんですね。これはピアノにはできないというか、そもそも開放弦がギターならではの表現ですけど、そこにスライドだったり、ビブラートだったり、チョーキングだったり、さらにギターならではの要素を交えることに、2人とも魅力を感じるんです」

2019年のパフォーマンス動画

――ギターの音色やエフェクターの使い方に関してはどんな印象ですか?

「エフェクターは面白い使い方をしてますよね。彼女はデジタルじゃなくてアナログをよく使っていて、アンプシュミレーターで作った音でもないだろうし、そこがギターの音作りの特徴になってると思います。もともとアコギをやってたから、やっぱりアナログなよさを取り入れたい人なのかなって」

――Twitterのアカウントの背景でもペダルをずらっと並べてますもんね(笑)。逆に、Ichikaさんは基本プラグインですか?

「ほとんどプラグインです。アナログだと自由度が少なく感じてしまって、プラグインでも自分でパラメーターをいじれる割合が多ければ多いほど好きです。リバーブとかは実機でいいなと思うものがなかなかなくて。

僕はValhallaとかFabFilterのリバーブがすごく好きでよく使っていて、サスティンをどれくらいにするかをフレーズ単位で詰められるし、オートメーションもかけられるのですが、それは実機だとなかなか難しい。

逆に、実機には実機にしか出せない音があるから、その音が欲しいときに使うのはよくわかります」