たなか、Ichika Nito、ササノマリイによる新バンドがいよいよアルバムを完成――類稀な創造性と技量と信頼関係で築かれた圧倒的な『CASTLE』に迫る!

三人ならではの持ち味

 ぼくのりりっくのぼうよみとしての表現に区切りをつけ、その後は楽曲提供や客演、さらには俳優/文筆業などさまざまな動きを見せてきたシンガー・ソングライターのたなか。UKのギター雑誌「Total Guitar」の〈読者が選ぶ史上最高のギタリスト〉で8位に選出、YouTubeのチャンネル登録者数も200万人を超える実力派ギタリスト/コンポーザーであり、川谷絵音らとのインスト・バンド、ichikoroの一員としても活動するIchika Nito。ボカロPからシンガー・ソングライターへ転向し、以降は自身の作品以外にもトラックメイカー/プロデューサーとして多くの外仕事を手掛けてきたササノマリイ。ソロ・アーティストとして各々の道を歩んできた三つの才能が集結したバンド、Diosがデビュー曲“逃避行”をもって突如シーンに現れたのは昨年春のことだ。

 お互いの楽曲でタッグを組んだ経歴のあるたなかとササノの相性の良さは言わずもがな、そこに加わった新たな武器は、「ペリフェリーとかヴェイル・オブ・マヤとか、リフの作り方が複雑怪奇な、数学的なアプローチをするもの……ジャンルで言うとジェントとかの、脳汁がじゅわっと出るような音楽を聴いて育ってきました」というIchikaの幾何学的なギター・フレーズ。深みのある陰りとセンシティヴな揺らぎ、どこか透徹した空気感──Ichikaとササノが立ち上げるそんな音像を背に、たなかの紡ぐメロディーが切迫した叙情を解き放つその音楽性には、三人ならではの持ち味がよく表れていた。

Dios 『CASTLE』 Dawn Dawn Dawn(2022)

 こうした先行曲群で自身の振り幅を開示してきた彼らが、ついにファースト・アルバム『CASTLE』を完成。その制作は、たなかが各曲のイメージをプレゼンしたことから始まったという。

 「パワポの資料を作っていって(笑)。Ichikaは外国のファンタジーがすごい好きなんで、そこから引っ張ってきたりして」(たなか)。

 「『ミッケ!』とかね」(Ichika Nito)。

 「そうそう。そういう世界観でこういうイラストを見たとき、どういうものを作りますか?みたいな感じで二人に投げて」(たなか)。