1963年に早逝したフェレンツ・フリッチャイの伝記。第二次世界大戦前の軍楽隊長としての活動や、戦後ザルツブルク音楽祭やベルリンでのデビューに関する詳細な記述、短期で終わったヒューストンやミュンヘン時代のことも詳しく伝えてくれる。逝去により実施されなかった計画や死因について考察も紹介している。フリッチャイは病気を境に芸風が大胆に変化、深化したと言われて実際録音を聴くとその通りだと感じていたが、本書では〈独裁型〉から〈協調型〉への変遷を、病気とその前後の各地での指揮活動を詳細に追うことで明らかにしている。フリッチャイに関する書籍はほとんどなかったので嬉しい発売。