「幾何学模様からいきなり〈君たちのSoundCloudを聴いたんだけど、すごく良いね〉といったDMがきたんです。あれよあれよという間に、彼らの主宰しているGuruguru Brainからのリリースが決まり、幾何学模様のファイナル公演にも出演させてもらって。夢みたいな展開だなと思っています(笑)」(園田努)。

 そのめぐろパーシモンホールでのライヴも評判になり、いま日本のサイケデリック・ロックにおいて注目を集めている新鋭バンド、maya ongaku。神奈川・藤沢で暮らす若者たちによって2021年に結成された3人組だ。

 「もともと諒大(高野)とは幼馴染で、よく遊んでいました。高校に入ると、お互いビートルズやドアーズ、クリームとか60年代の音楽にハマり、さらに仲良くなって。それから、はっぴいえんどに影響されて、バンドを始めたんです」(園田)。

 「僕がそこに加わった形。それ以前は、海岸で1人サックスを吹いたりしていましたね(笑)」(池田抄英)。

 「高校卒業後は、一時期7、8人で一戸建てを借りて住んでいて、夜な夜な音楽を聴いたり、ジャムったり。ピンク・フロイドの“Echoes”とかを爆音で聴いた勢いで、家のスタジオ部屋に入り、朝まで演奏したこともありました(笑)」(園田)。

 「サックスの入れ方はピンク・フロイドの『The Dark Side Of The Moon』を聴いて勉強しましたね」(池田)。

 「カンとか坂本慎太郎にも影響されています」(高野諒大)。

 maya ongakuの根城となっているのが、江ノ島の古着屋〈ACE GENERAL STORE〉。飲食店やスタジオも併設されており、ファッションやアートに愛情を注ぐ人々の溜まり場になっているという。

 「諒大と池田はあそこでバイトをしていたこともあるし、ズブズブの関係です(笑)。Suchmosのメンバーや先輩ミュージシャンもスタジオでのセッションによく来ていて、僕らも彼らから楽器の扱い方や弾き方を学びました」(園田)。

 「基本はブルースのジャムなんで、コードさえ覚えたら誰でも参加できる。だから初心者でも輪に加われるし、周りが上手いので自然に上手くなる。演奏文化が根付いている街なんですよね」(池田)。

maya ongaku 『Approach To Anima』 Guruguru Brain/BAYON PRODUCTION(2023)

 そんな開かれたムードは、彼らが完成させたファースト・アルバム『Approach To Anima』にも漂っている。いわゆるポップス的なキャッチーさとは離れた音楽のようでいて、ループによってドリーミーな感覚を醸し出すアンサンブル、穏やかで郷愁を誘う歌心は、さまざまな聴き手を受け入れる間口の広さを持つ。

 「ドラマーがいないのも大きくて。ドラムの場所を、違う楽器で埋めることができるんです。ギターでいろいろな音色を試したり、民族楽器を使ったり」(園田)。

 「ベースの刻み方次第でロックっぽくなったり生音っぽくなったりするので、微妙なニュアンスに気を遣っています。歌があまりにフォーキーなのも違うし」(高野)。

 ウォーターフォンをベースに、高野知人の鉄彫刻家が独自開発したという楽器=Sei Waterの幻想的な音が耳に残る“Nuska”や“Water Dream”、童謡のような歌を据えた“Melting”、バレアリックなダウンテンポの“Something in Morning Rain”など全8曲を収録した『Approach To Anima』。このアルバムは、忙しない日常のなかに、心地良いトリップの時間を作ってくれるはずだ。リリース後は〈森、道、市場〉〈FFKT〉などフェスへの出演が続く彼らに、maya ongakuのライヴの楽しみ方を訊いた。

 「音楽に身を任せて、夢のような心地になってほしいなと思います」(池田)。

 「ルーパーでひたすら繰り返す演奏だから、トランスしてほしいよね」(園田)。

 「ゆらゆら揺れていたら〈気が付くと変な場所に来ちゃった〉みたいな」(池田)。

 


LIVE INFORMATION
rhythm echo noise
2023年8月10日(金)東京・渋谷 WWW
開場/開演:18:00/19:00
出演:maya ongaku/Takuro Okada and more...
前売り:3,500円(税込/ドリンク代別)

■先行予約(先着)
受付期間:2023年6月1日(木)19:00~2023年6月4日(日)23:59
受付URL:https://eplus.jp/rhythmechonoise/

■一般発売
2023年6月10日(土)10:00~
e+:https://eplus.jp/rhythmechonoise/
問い合せ(WWW):03-5458-7685

 


maya ongaku
園田努(ヴォーカル/ギター)、高野諒大(ベース)、池田抄英(キーボード/サックス)から成る3人組バンド。江の島の古着屋〈ACE GENERAL STORE〉を拠点にしているメンバーで2020年に結成。同年より実験的なデモ・シリーズ〈maya experimental〉をSoundCloudで発表。2022年12月に幾何学模様のファイナル公演にオープニング・アクトとして出演。ファースト・アルバム『Approach To Anima』(Guruguru Brain/BAYON PRODUCTION)をLPと配信でリリースする。