20代で書いた曲も、尊敬してやまないSKYEと共に演奏することで極上のロックサウンドに

 俳優・佐野史郎が2年ぶりにSKYEと組み『ALBUM』をリリースする。音楽好きな佐野は、はっぴいえんどを始め日本のフォークやロックに造詣深く、また〈タイムスリップ〉や〈佐野史郎とライスカレー〉などのバンドで活動してきたが、そうした佐野の音楽歴の到達点が本作と言えようか。

 鈴木茂(ギター)、小原礼(ベース)、林立夫(ドラムス)、松任谷正隆(キーボード)によるSKYEは2019年に初作を発表したが、高校時代に鈴木・小原・林が組んだバンドがSKYE。松任谷も同じ頃から音楽に携わり、今に至るまで4人は数え切れないほどの作品やアーティストの活動を支えてきた。既知の間柄だった佐野と小原らが数年前に再会したことから前作 『禁断の果実』が生まれた。そしてそれがSKYE(再)結成へと繋がり、今作へと繋がった。

佐野史郎 meets SKYE 『ALBUM』 BETTER DAYS(2023)

 そんな5人が共有する60年代の風景やサウンドを下敷きに、ゆったりと歌う佐野の声が心地よい。“MELODY HOUSE”で〈新しいアルバムが届いた〉〈老舗のロックバンドはいいな〉と歌うのは本作のことのようだ。青春を彷彿させるロックンロールもあれば、ニール・ヤングを思わせる曲もある。またコロナ禍からの解放を歌った曲は同時期に闘病を重ねていた佐野の心からの吐露にも思える。

 そんな佐野の曲を懐かしくも暖かい演奏で受け止めるSKYEの4人が素晴らしい。ノスタルジーも意識したのだろうが、未来へと進める活力を持った演奏なのだ。本作の最後に入る“冬の街の夜空”は前述のタイムスリップで初めて作った曲だそう。20代だった1980年代に書いた曲を、今SKYEと演奏することで自分史を先へと書き進めているようでもある。

 「1970年代にリリースされた幻のアルバムを発掘したかのように楽しんでいただけたなら幸いです」とは本作に寄せた佐野のコメントだ。確かにこれは、現れるべくして現れた幻のアルバムなのかもしれない。