(左から)安田謙一、松本隆、鈴木茂

はっぴいえんど。メンバーは細野晴臣、大滝詠一、松本隆、鈴木茂の4人。説明するまでもなく、日本語ロックの礎を築いた本邦ポップミュージック史における最重要バンドだ。

そのはっぴいえんどが残した『はっぴいえんど』(70年、通称『ゆでめん』)、『風街ろまん』(71年)、『HAPPY END』(73年)というオリジナルアルバム3作が最新技術によって丹念にリマスターされ、CDでリイシューされた(レコードの日にはアナログ盤もリリースされた)。これを記念して2023年11月4日にタワーレコード渋谷店B1FのCUTUP STUDIOで開催されたのが、松本と鈴木、司会の安田謙一(ロック漫筆)によるトークイベントである。Mikikiは、この特別な催しで語られたことを全4回に分けてお届けする。

なお、好評につき早々に売り切れてしまった『はっぴいえんど』『風街ろまん』のアナログ盤だが、2024年1月下旬から再プレスされる。買い逃していた方は、このタイミングでぜひ手に入れてほしい。 *Mikiki編集部


 

新リマスター盤はオリジナルに忠実な音

安田謙一「それでは大きな拍手でお迎えください。はっぴいえんどの松本隆さんと鈴木茂さんです!」

松本隆「どうも」

安田「緊張しますね。ただのトークショーじゃないぞという感じがひしひしと伝わってきます」

松本「圧がすごい(笑)」

安田「やっぱり違いますね。よろしくお願いします。

今回の再発に関してなんですけど、松本さんが海外での発売を希望されたことが一つのきっかけになったとお聞きしました」

松本「細野さんのソロとかは海外でも出ているんだけど、はっぴいえんどは出ていないから〈出したら?〉とスタッフに言ったんです」

安田「そうだったんですね。それで、3枚しかないスタジオアルバムが再発されました。茂さん、今回のリマスタリングの特徴というのは?」

鈴木茂「今回は〈オリジナルに忠実な音にしてほしい〉という意見があって、それは若干不安だったんです。オリジナルに近ければ近いほど出す意味がないだろうと。

ただ、音を変えて失敗するのも怖かったのですが、出来上がったものを聴いてみると、ドラムの音が特にいい音になっていて安心しました」

松本「ありがとうございます。CDの時はキックが聞こえなかったんだよね」

鈴木「あの頃って、キックにマイクを立てていた?」

松本「もちろん。それで何時間も揉めたんだもん(笑)。『ゆでめん』の時に」

安田「今回、楽器の音が全て入っていてよく聞こえて、それでいてガツンと迫力がありますね」

松本「昔ね、『Stereo Sound』という雑誌があるじゃないですか? あそこの視聴室が結構よかったんです。そこで総額1,000万円オーバーくらいの高い機材を揃えてCDとアナログを聴き比べたんだけど、アナログの方が全然よかったんだよね」

鈴木「デジタルだと一番高いところと低いところの帯域がカットされちゃうんだよね。その影響が出るみたいで、アナログの方が包まれるような落ち着いた音で、いい感じがしますよね」

安田「レコーディングされたあとに、自分たちで大きな音でレコードを聴かれたことはあるんですか?」

松本「僕は、自分のものはほとんど聴かないからなぁ」

鈴木「僕も、曲を作っている最中は何百回も聴くんだけれど、レコーディングが終わったあとってほとんど聴かないね」

安田「なるほど。リアルタイムでこの3枚を買った人も、それぞれのステレオとか、それこそラジカセみたいなもので聴いていて、その音に馴染みがあるので、再発盤を聴く時も常にその記憶と照らし合わせていると思うんですよね。

今回も何回目かの再発で、毎回その時代の最新のテクノロジーを使っているんですけど。今回、特に『風街ろまん』に関しては、アルバム単位で一つになっているマスターではなく、その一つ前の段階の、楽曲ごとにそれぞれ存在するテープから起こしているんですよね?」

鈴木「マルチではないでしょ? 2chに落としたやつをいじったということですよね」

安田「はい」

鈴木「僕のソロのファーストの『BAND WAGON』(75年)は、アメリカで作り終わって日本に戻ってくる時に、テープが税関でX線に当たると音が消えるっていう変な噂が流れていたので、保険のためにマスターを2つ作ったんです。1本は自分の家に置いて、もう1本はレコード会社が何十回もリマスターしたんですよ。アナログの磁気テープというのは百回ぐらいかけると歴然と高音がなくなって、どんどん音が劣化するんです。それである時、押し入れにしまっていた僕のマスターを使ったら、ものすごくいい音で。特にアナログのテープだと、そういう違いがあるんですよね」

鈴木茂 『BAND WAGON』 PANAM/クラウン(1975)

 

フォークをやりながらもサイケ好きだった細野晴臣

安田「では、アルバムを1枚ずつ追ってお話しさせていただいてよろしいでしょうか? まずファーストから。1970年8月5日発売。

はっぴいえんど 『はっぴいえんど』 ソニー(2023)

タイトルは『はっぴいえんど』というバンド名とそのまま同名なんですけれども、通称『ゆでめん』です。これは当時から『ゆでめん』と呼んでいましたか?」

松本「みんな『ゆでめん』と言っていました。『はっぴいえんど』なんて名前、忘れているよね(笑)。だから(ジャケットを描いた)林静一さんが付けたようなものだね。

細野さんに訊くといつもね、〈タイトルはいらない、全部『はっぴいえんど』でいい〉って言うんです。だから3枚目はそうなった」

安田「ちょっと遡るんですけれども、はっぴいえんど結成のタイミングについて訊かせてください」

松本「もともとエイプリル・フールというバンドをやっていまして、それがガタガタになっちゃって、(デビューアルバム『APRYL FOOL』を69年)9月に発売することになり、4月にレコーディングしたんです。その間にメンバーの仲が悪くなっちゃって、発売同時解散コンサートというのをやったんですね。そんなことをやったのはエイプリル・フールくらいだと思うんだけど(笑)。

エイプリル・フール 『APRYL FOOL』 コロムビア(1969)

それが終わって困っちゃって、仲がよかった細野さんと僕と小坂忠の3人で新しいバンドをやろうという話になったんだけど、忠がロックミュージカルの『HAIR』に出演することになったんですよ。で、2人になっちゃって、そこに大滝さんが入ってきて……」

鈴木「そこは詳しく教えてくれない? 僕は知らないから」

会場「(笑)」

安田「茂さんの登場以前ですもんね(笑)」

鈴木「大滝さんがそこに現れたのは、どういう経緯だったの?」

松本「細野さんはもともとザ・キングストン・トリオみたいなフォークトリオをやっていたんです。中田佳彦さんって覚えてる?」

鈴木「覚えてる。大滝さんと中田さんと細野さんの3人でトリオをやっていたってこと?」

松本「そう。その3人でキングストンのコピーみたいなのをやっていたんです。一方で、細野さんってサイケ趣味もあるじゃない? そっちでSKYE(鈴木茂、小原礼、林立夫のバンド)とかを好きになっているわけです」

鈴木「なるほどね」

松本「その2つが並行していたんですけど、フォークトリオの方が消えたんだよね。それで、どこかで大滝さんと細野さんが出会ったんだ。

ある時、細野さんが大滝さんに〈バッファロー・スプリングフィールドって分かるか?〉って訊いたら、大滝さんが〈分からない〉と言ったから、〈あいつはダメだ〉と当時言っていて(笑)。そうしたらある日、大滝さんが〈バッファローが分かった!〉と電話してきて。それで〈一緒にやろうか〉となった。

茂の名前は、ずっと細野さんの頭の中で候補にあったんだよね」

鈴木「3人でヴァレンタイン・ブルーという名前で曲作りを始めていたんでしょ?」

松本「細野さんがヴァレンタイン・ブルーという名前を決めたんだけど、僕はあまり気に入っていなかったんだよね。ちょっと女々しい感じがして。大滝さんは気に入っていたけど」

鈴木「3人で旅行に行って曲を作っていたと聞いたけれど」

松本「東北旅行をしたよ。その時、僕の父親が福島にいて、そこに一泊して福島から奥日光に行くっていう。僕のトヨタの車か細野さんのブルーバードのどっちで行ったかはよく覚えていないんだけど、運転は僕がしていたと思う」

 

夜が明けたら〈12月の雨の日〉だった

鈴木「僕のところに細野さんから電話があって、ギターを持ってちょっと来てくれないか?と言われて松本さんの家に行ったんだけど、あの時に大滝さんはなんでいなかったの?」

松本「あれは……不思議だね(笑)」

会場「(笑)」

鈴木「細野さんが松本さんの部屋のベッドの上で、生ギターで“12月の雨の日”を弾いていたなぁ」

松本「順を追って話すと、東北ドライブの時は紅葉がすごかったから秋だよね。その直後に大滝さんの若林の家に遊びに行ったんだ。その時に僕はこたつで“春よ来い”と“12月の雨の日”を詞先で書いて、2つ並べて」

鈴木「目の前の景色が詞になったんだね。〈♪こたつを囲んで~〉(“春よ来い”)っていうのは」

松本「大滝さんの生活をそのまんま詞にしたんだよ」

安田「〈家さえ飛び出なければ〉という歌詞があてはまる人が、他にいないですからね」

松本「(大滝以外は)みんな実家住みだからね。

僕の家から大滝さんのところに行くのにはテレ朝通りを通るから、今の六本木ヒルズあたりでタクシーを拾ったんです。で、その日は雨が降っていた。今だったらググればすぐに出てくるけど、その日をスージー鈴木さんが〈69年の12月に雨が降った日はこの日しかない!〉って突き止めたの。11月30日に雨が降ってて、こたつで詞を書いて、夜が明けたら〈12月の雨〉だった」

鈴木「あの頃ってさ、詞先の方が多かったよね」

松本「ほとんどそうだね」

鈴木「“花いちもんめ”と“ちぎれ雲”の2つは、同時に詞をもらったんだっけ?」

松本「そんなの覚えてないよ(笑)」

鈴木「でも、ほとんど詞先だったよね」

松本「だって、曲先の作り方なんて知らないんだから(笑)。解散して筒美京平に出会ったら、いきなり楽譜を渡されたからビックリした(笑)」

安田「はじめに大滝さんが書いた曲が松本さんのもとに届けられて、茂さんがそれにギターを合わせたんですよね」

松本「僕は詞を2つ書き残したけど、それに曲が付いたかどうかも知らない。それで細野さんが集合をかけて、なぜか大滝さんは来ていなくて、そのとき茂が初めて参加したんだよね」

鈴木「細野さんの生ギターで“12月の雨の日”を歌ったんです。僕がそれに合わせて弾いたギターのフレーズを、そのまま使うようになったんだよね。あのとき松本さんは当然いたよね?」

松本「いたよ。僕の部屋だからね(笑)」

鈴木「そうだよね。だから、あれが(はっぴいえんど結成の)きっかけだったんだよね」

安田「ちなみに、その時は生ギターでしたか?」

鈴木「僕はエレキギターしか持っていなかったからね」

松本「アンプなんかないよね」

鈴木「だから静かな状態でペンペンって弾いて……」

安田「それで、細野さんも〈これでいける〉と思ったんですかね? だからそれが、はっぴいえんど結成の瞬間ですね」

松本「それは分からないね。細野さんってとっても複雑で、一番長い付き合いだけど、僕はいまだによく理解できないから(笑)。あの時、なんで大滝さんを呼ばなかったんだろうね?」

鈴木「いまだに不思議だよね」

安田「レコーディングでは、大滝さんが歌われたんですもんね」

松本「大滝さんはちゃんとメロディーも覚えているし、すごいよね。当然、当時は譜面なんか書けなかったのにね」

安田「それが69年の11月末と12月のお話ですよね」

 

日本語でロックをやるための教科書も参考書もなかった

松本「(『はっぴいえんど』を)録音したのは、年が明けて3月か4月くらいだったね」

安田「初めからアルバムを作ることが前提にあるバンドだったということですか?」

松本「それは小倉エージのおかげだね。小倉エージと細野さんが渋谷でばったり会って、エージさんが〈細野くんの新しいバンドができたなら、URCで録音しようよ〉と言ってくれたんです。他のメジャーのレコード会社から何の話もなかったから、すぐOKになったんだよね。だから録音が前提だったね」

鈴木「録音の話が来る前に、もうすでに何回かライブをやっていたでしょ?」

松本「それはヴァレンタイン・ブルーの時じゃないかな?」

鈴木「ある時、越智友嗣さんが司会のライブで〈今日からはっぴいえんどになりました〉という話を僕がしたんですよ」

松本「そんなこともあったね!」

鈴木「しばらく経って小倉エージさんから話が来て、アオイスタジオでレコーディングに入ったんだけど、結局それまでに半分くらい、特に大滝さんの曲はライブでやっていたよ。だからレコーディングもスムーズに進んだ。細野さんはベースを弾きながら歌えないという人だったから、細野さんの曲はライブではあまりやっていなくて。

それで、さっきの〈大滝さんの曲を細野さんがよく覚えていた〉という話になるんだけど、細野さんは作曲家として大滝さんをとてもリスペクトしているんだよね。大滝さんの才能をその頃から買っていて、メロディーもしっかり覚えていたということなんだよ」

安田「それでファースト『ゆでめん』ができるわけですけれども、手応えはどうでしたか?」

松本「やったな!と思ったよ」

安田「なるほど。話を戻すと、以前のバンドのライブの時は英語詞のカバーが多かったそうですが、松本さんが〈日本語詞だけで行こう〉と提案したのだとか?」

松本「そう。それが、みんなショックだったみたいね。

カバーをやっていると、演奏しているその時は気持ちいいんだけど何も残らないんだよね。ザ・フローラルっていうGSバンドに僕と細野さんが入ってエイプリル・フールができたから、慣例上、僕らにはあんまり選曲権がなかったんです。それで、ずっとドアーズのコピーやってて。ドアーズは好きだけど、ずーっとやっていると飽きちゃうんだよね(笑)。

いくら好きでも、コピーだけをやっていてもしょうがないと思って、〈それだったらオリジナルを作ってちゃんと練習しようよ〉って言ったんだ。あとで訊いたら、大滝さんはショックを受けていたみたいだった」

安田「みなさん、洋楽で育ってきたわけですもんね。〈音楽=洋楽〉だったと」

松本「面白いなと思うのは、岡林(信康)の『見るまえに跳べ』(70年)と『はっぴいえんど』はほぼ同時期に録音していたんだよね。いきなり2枚同時にすごい曲数のを録音していたので、(スタジオワークに)急速に慣れちゃったんだよね」

岡林信康 『見るまえに跳べ』 URC(1970)

安田「茂さんは、その時がスタジオ初体験でしたか?」

鈴木「そうですね。あの頃、僕はSKYEという名前でアマチュアのカバーバンドを林立夫と小原礼と3人でやっていて。はっぴいえんどに誘われてレコーディングして、それを勝ち誇ったようにメンバーに聴かせた記憶がある(笑)。それくらい『ゆでめん』には手応えがあった。あれを1週間とか10日くらいで仕上げられたのは、ライブで半分以上の曲をやっていて慣れていたからだね。

カバーがつまらないっていうのは、要するにオリジナルは自分で少しずつメロディーを変えたりとかできるでしょ? でもカバーの場合は、強いイメージがもうすでに出来上がっているから、そんなに大きく変えられない。それで、バンドでオリジナルをやっているなか、しかも日本語の詞でやっているということで、さらに新しい何かをやっているなという気持ちになれたので、ほんとに楽しかったですね」

松本「お手本がなかったからね。日本語でロックをやるための教科書も参考書もなかった。たとえ自分の頭の中では実現できても、実際にはできないんです。

でも作っているうちに、だんだん自信がついてきて、アルバムが出来上がる頃にはだいぶ自信があったね」

鈴木「さっき岡林さんとはっぴいえんどを同時にやったと言っていたけど、もう一つは遠藤賢司のアルバム(70年作『niyago』)だよね。遠藤さんの詞って、岡林さんのに比べると、わりと松本さんの詞と言葉の選び方に近い部分があったよね」

松本「〈猫〉とか〈夜汽車〉とかね。彼はすごい才能の持ち主だったよね」

遠藤賢司 『niyago』 ポニーキャニオン(1970)

 

はっぴいえんどにはスターがいなかった

安田「ちなみに松本さんって、自分で歌おうと思ったことはないですか?」

松本「僕が歌おうとすると細野さんが笑うから(笑)」

会場「(笑)」

安田「ちょっとトライはされたんですか?」

松本「笑われるのが嫌で、〈じゃあ僕は詞だけ書いています〉と」

安田「その思い切りがすごいですね」

松本「そんなに目立ちたがりじゃないからね」

安田「URC周りの関西フォークとか、その辺は自己主張が強い人が多かったわけじゃないですか?」

松本「みんな自己主張の塊だね」

安田「そんななか、松本さんはURCの中では全くの異色ですよね」

松本「若い時からフィクサーっぽいんだよね。うしろに隠れていた方がやりやすいんだ(笑)」

鈴木「松本さんは言葉の世界で自分の全てを主張していたから、人前で歌って目立つことはなくても、意気込みはすごく感じていましたね」

安田「その割り切り方は、若者にしては珍しいですよね。茂さんは、最初の時点では自分で歌ってみたいという気持ちはなかったんですか?」

鈴木「僕は今でもそうだけど、自分の声を再生するのがものすごく嫌で。でもある時、ラジオ番組に出た時にスタッフの人に〈茂さんの声って、聞いてると落ち着くいい声ですよね〉と言われて、そこで初めて自信が持てたんだけど、あんまり自分の声は好きじゃないんですよね」

松本「細野さんにもそういうところがあるよね」

安田「ということは、大滝さんだけが積極的に歌う人だった?」

松本「ボーカリストという感じだったね」

安田「当時って、ボーカリストがバンドの顔になるじゃないですか?」

松本「でも、大滝さんもシャイだったんだよね」

安田「みんな表に立ちたくなかったんですね(笑)」

松本「はっぴいえんどにはスターがいなかった(笑)。でも回数は少ないけど、テレビに2、3回は出てるよね。サンフランシスコの番組出演とかがあったね」

鈴木「あの映像はぜひ見たいよね。どこへ行っちゃったんだろうね?」

松本「あの時は大滝さんも頑張って歌っていたよね」

 

日本語ロック論争から半世紀、日本語のまま海外で評価される時代に

安田「1枚目の時は、売れたいという意識は全くなかったんですか?」

松本「売れるというのは、最初から切り捨てていたんですよ。このバンドでは無理だと思ったから(笑)。そういう計算は一切しないようにしようと。僕の中にはヒットメーカーが眠ってたわけだから、売れる売れないは分かったんだよね」

鈴木「あの頃の売れるものって、やっぱり歌謡曲が強かったよね。そのあとにグループサウンズが出てきたでしょ? グループサウンズも職業的な作曲家が曲を作っていたケースが多くて、はっぴいえんど結成ぐらいから、いわゆるシンガーソングライター的な〈自分たちで曲を作る〉っていう流れになったんだよね。だから、そういう意味では〈売れる〉ことに対するイメージがあんまりよくなかった」

安田「今ちょうど売れる売れないの話が出たので忘れないうちに触れておきたいんですけど、(2023年)10月31日のオリコンデイリーチャートで今回の再発盤が8位、9位、10位に入ったんですよ」

会場「(拍手)」

鈴木「素晴らしいですね」

安田「アナログの再発盤も含めれば、ウイークリーにも入るんじゃないかと※」

※編集部注 11月8日のオリコン週間アルバムランキングで『風街ろまん』が12位、『HAPPY END』が13位、『はっぴいえんど』が15位にランクインした。はっぴいえんどのアルバムがトップ20入りしたのは『THE HAPPYEND』の 14位(85年9月23日付)以来、38年2か月ぶり

松本「ぜひ。ロングセラーになってほしいね」

安田「もともとこのアルバムが出た当時にこういうことって一切なかったわけですから、逆に面白いですよね」

松本「僕の知る限り『ゆでめん』の広告は当時、『ニューミュージック・マガジン』の1ページの4分の1だけ。〈これっていくらなの?〉って早川義夫に訊いたら〈5万〉って言われたから、僕はずっとそう思っていたんだけど、誰かがSNSで当時の広告の写真を送ってくれたのを見たら遠藤賢司とはっぴいえんどの抱き合わせだったから、〈なんだ、2万5,000円じゃん!〉って思った。

当時は2万5,000円しか広告費がなかったバンドが、50年こうやってキープできているというのはすごいなと思う」

安田「『ニューミュージック・マガジン』の話が出たんですけど、松本さんが茂さんに〈『マガジン』の年間ベストで日本のロック部門の1位を取ろう〉と誘い文句を言ったことは伝説になっていますよね」

松本「え? 僕が言ったの? あぁ、誘い文句は甘いことを言うからね(笑)」

安田「〈売れるぞ〉とかじゃないのが、ほんとに変わってますよね」

松本「それで1位を取ったから、内田裕也さんが怒っちゃった。中村とうようさんも怒っちゃったわけですね」

安田「日本語ロック論争ですね」

松本「味方は小倉エージと北中(正和)さん、あとミッキー(・カーチス)さんも少し理解してくれていたみたいだね。あとは全員敵だった」

安田「でも50年後の今では、日本語のまま海外で評価され始めていると」

松本「それはサブスクやYouTubeがあるからだろうね。その2つは国境がないんですよ。ブラジルのシンガーはポルトガル語で歌ってるし、台湾のシンガーは台湾の言葉で歌っているから、漠然とはあるんだけど。そういう意味では、アメリカの支配力はちょっと弱まったよね」

安田「古いバンドも新しいバンドも関係ないですもんね」

松本「空間軸も時間軸も自由になったよね。こんなことになるとは思いもしなかったな」

鈴木「60年代から70年代って、欧米の人たちは日本の音楽にそれほど関心を持っていなかったから。逆に言えば、それがあったからいまだに新鮮な形で世界の市場に届いているのかもしれない」

 


RELEASE INFORMATION

はっぴいえんど 『はっぴいえんど』 ソニー(2023)

リリース日:2023年11月1日(水)

■初回生産限定盤
品番:MHCL-30914
価格:3,520円(税込)

■通常盤
品番:MHCL-30915
価格:2,200円(税込)

TRACKLIST
1. 春よ来い
2. かくれんぼ
3. しんしんしん
4. 飛べない空
5. 敵タナトスを想起せよ!
6. あやか市の動物園
7. 12月の雨の日
8. いらいら
9. 朝
10. はっぴいえんど
11. 続はっぴーいいえーんど

ボーナストラック
12. かくれんぼ(歌入れ最終ダビング Take 1)*
13. 12月の雨の日(最終ダビング Take 2)*
*初回生産限定盤のみ収録

 

はっぴいえんど 『風街ろまん』 ソニー(2023)

リリース日:2023年11月1日(水)

■初回生産限定盤
品番:MHCL-30916
価格:3,520円(税込)

■通常盤
品番:MHCL-30917
価格:2,200円(税込)

TRACKLIST
1. 抱きしめたい
2. 空いろのくれよん
3. 風をあつめて
4. 暗闇坂むささび変化
5. はいからはくち
6. はいから・びゅーちふる
7. 夏なんです
8. 花いちもんめ
9. あしたてんきになあれ
10. 颱風
11.春らんまん
12. 愛餓を

ボーナストラック
13. はいからはくち(完パケ Take 1)*
14. 颱風(Full Size)*
*初回生産限定盤のみ収録

 

はっぴいえんど 『HAPPY END』 ソニー/ベルウッド(2023)

リリース日:2023年11月1日(水)

■初回生産限定盤
品番:MHCL-30918
価格:3,520円(税込)

■通常盤
品番:KICS-4113
価格:2,200円(税込)

TRACKLIST
1. 風来坊
2. 氷雨月のスケッチ
3. 明日あたりはきっと春
4. 無風状態
5. さよなら通り3番地
6. 相合傘
7. 田舎道
8. 外はいい天気
9. さよならアメリカ さよならニッポン

ボーナストラック
10. 風来坊(吉野金次MIX)*
11. 田舎道(吉野金次MIX)*
*初回生産限定盤のみ収録

 

はっぴいえんど 『はっぴいえんど<完全生産限定盤(クリアレッドヴァイナル)>』 ソニー(2023)

■完全生産限定盤(クリアレッド盤)
リリース日:2023年11月3日(金)
品番:MHJL-292
価格:4,070円(税込)

TRACKLIST
Side A
1. 春よ来い
2. かくれんぼ
3. しんしんしん
4. 飛べない空
5. 敵タナトスを想起せよ!
Side B
1. あやか市の動物園
2. 12月の雨の日
3. いらいら
4. 朝
5. はっぴいえんど
6. 続はっぴーいいえーんど

 

はっぴいえんど 『風街ろまん<完全生産限定盤(透明クリアヴァイナル)>』 ソニー(2023)

■完全生産限定盤(透明クリア盤)
リリース日:2023年11月3日(金)
品番:MHJL-293
価格:4,070円(税込)

TRACKLIST
Side A:風
1. 抱きしめたい
2. 空いろのくれよん
3. 風をあつめて
4. 暗闇坂むささび変化
5.はいからはくち
6.はいから・びゅーちふる

Side B:街
1. 夏なんです
2. 花いちもんめ
3. あしたてんきになあれ
4. 颱風
5. 春らんまん
6. 愛餓を

 

はっぴいえんど 『HAPPY END<50th数量限定プレス盤>』 ベルウッド(2023)

■50th数量限定プレス盤(重量盤)
リリース日:2023年11月3日(金)
品番:KIJS-90039
価格:4,070円(税込)

TRACKLIST
Side A
1. 風来坊
2. 氷雨月のスケッチ
3. 明日あたりはきっと春
4. 無風状態

Side B
1. さよなら通り3番地
2. 相合傘
3. 田舎道
4. 外はいい天気
5. さよならアメリカ さよならニッポン