叙情的な音を奏でる24歳の新鋭、挨拶代わりのヴァイオリン小品集
ふとした瞬間、人の心に染み入るような叙情的で静謐さを感じる音色は、24歳の青年音楽家が弾いているとは思えなかった。ヴァイオリニスト、東亮汰のメジャーデビューアルバム『Piacere〜ヴァイオリン小品集』のことである。イタリア語で〈はじめまして〉や〈喜び〉を意味するアルバムには、今まで丁寧に形作ってきた自らの音楽観に加え、これまで出会った人々への感謝の思い、音楽を奏でられる喜びが表現されている。
「僕の家庭は母がアマチュアでヴァイオリンを弾いていたため、家でいつもクラシックのCDがかかっていました。今音楽は配信が主流ですが、僕の場合はCD。自分の作品がリリースされるのはとても感慨深い。このアルバムはエルガー“愛の挨拶”をはじめ、ヴァイオリンの代名詞的な曲を並べてあいさつ代わりの作品集にしようと考えました。僕のことをアニメ『青のオーケストラ』で知った方も多いと思うので、普段あまりクラシックを聴かない人にも幅広く聴いてほしい」
「収録作には演奏し慣れた作品だけでなく、初めて演奏する曲も多いです。アルバムは曲の組み合わせやバランスが重要。共演したピアノの髙木竜馬さんは多忙な方ですが、限られた時間でレコーディングの際にはアドバイスもいただきました。特に思い入れがあるのは、ドヴォルザーク“わが母の教え給し歌”。練習を付きっきりで見てくれた母への感謝を込め、母が好きなこの曲を真っ先にアルバムに入れると決めました」
今回のアルバム制作の過程で役に立ったのは、世界で活躍するピアニスト、反田恭平が率いる〈ジャパン・ナショナル・オーケストラ〉での経験だ。
「反田さんも僕と同じ桐朋学園出身です。僕よりも5歳年上で、高1の文化祭の時に反田さんが指揮者として来た。その後特につながりはなかったのですが、新型コロナウイルスが拡大し始めた2020年3月、反田さんから突然、電話でオケに参加してほしいという連絡をいただきました。驚きましたが嬉しかったです。人との巡りあいという意味で僕はすごく恵まれています」
順風満帆、前途洋々に見える音楽活動だが、彼の中では全く満足していない。冷静に自身の現状と今後の展望を捉えている。
「深み、幅のある音楽家になるのが目標です。そのために子供の頃から憧れていた指揮活動の準備も始めました。指揮をやると音楽の全体像が見えるので、ヴァイオリニストの活動にも生きる。欧州方面への留学もしたいです」
LIVE INFORMATION
トーク&ミニライヴ
2023年11月12日(日)東京・タワーレコード渋谷店 7F イベントスペース
開演:15:00
出演:東亮汰(ヴァイオリン)/髙木竜馬(ピアノ)
https://towershibuya.jp/2023/10/11/189609
第202回毎日ゾリステン
東亮汰 バイオリン・リサイタル
2023年12月1日(金)神奈川・横浜 みなとみらいホール
開場/開演:18:45/19:30
https://yokohama.mainichi-classic.net/solisten/
THE J.S.バッハ演奏会
2024年2月3日(土)東京・赤坂 サントリーホール 大ホール
開場/開演:13:00/14:00
出演:松田理奈/大木麻理/佐藤友紀/西山まりえ/松木さや/城戸かれん/直江智沙子/東亮汰 ほか
曲目:トッカータとフーガ ニ短調 BWV565 ほか
https://www.universal-music.co.jp/higashi-ryota/