オーケストラ部が奏でる少年少女たちの青春群像劇、「青のオーケストラ」1年ぶりの最新刊発売

阿久井真 『青のオーケストラ 11』 小学館(2023)

 「のだめカンタービレ」「四月は君の嘘」、最近ではTVドラマ「リバーサルオーケストラ」も記憶に新しいが、クラシック音楽を題材にする作品は根強い支持を得ている。その系譜にある中で今注目したい一作がある。すなわち、4月からTVアニメ化もされるコミック「青のオーケストラ」である。

 天才の父を持つがとある理由でヴァイオリンを辞めてしまった天才少年:青野一を中心に高校のオーケストラ部が織りなす物語。愛すべき少年少女たちが学園生活を通して悩み、葛藤しながら成長していく青春群像劇だ。

 その特徴は人間ドラマを丁寧に描くとともに、それらが昇華されたオーケストラ演奏シーンの描写力。青野とライバル:佐伯が邂逅し激しく〈競〉奏する“ヴィヴァルディ:春”(2巻)、コンクール編のクライマックスを築く凄絶な“サン=サーンス:バッカナール”(9巻)など、演奏シーンは圧巻である。

©阿久井真/小学館

 不定期連載のため約1年ぶりとなる最新刊11巻が待望の発売。今巻では前巻末から突入した「世界ジュニアオーケストラコンクール編」を魅力的な新キャラクターも交えて展開していく。題材となる楽曲は“芥川也寸志:交響管弦楽のための音楽”。それを通して芥川という芸術家同士の親子関係が、青野一の親子関係にも投写され物語はより深みを帯びてくる。

 さて前述の通りNHK Eテレにてアニメが放映されるが、クラシックを題材にするだけあり音楽面のこだわりも強い。主要キャラクターたちの演奏に、東亮汰・山田友里恵・尾張拓登ら若手実力派ヴァイオリニスト達が担当し瑞々しい音を付す。特筆すべきは青野一の父で世界的天才ヴァイオリニストである青野龍仁に、同じく世界的ヴァオリニストであるヒラリー・ハーンが演奏するという豪華ぶりだ。また劇伴にはポスト・クラシカル界の雄:小瀬村晶、OPにはNovelbright、EDは粗品が作詞・作曲を手掛けるなど見どころ/聴きどころの尽きない作品になっている。

 


INFORMATION
TVアニメ「青のオーケストラ」

Eテレ 毎週日曜 午後5時放送中(再放送:Eテレ毎週木曜 午後7時20分)
原作:阿久井 真
監督:岸 誠二
音楽:小瀬村 晶
声の出演:千葉翔也/土屋神葉/加隈亜衣/古川 慎/置鮎龍太郎 他
演奏:東 亮汰/尾張拓登/山田友里恵/佐藤晴真/ヒラリー・ハーン 他
指揮者:吉田行地
オーケストラ:洗足学園フィルハーモニー管弦楽団
アニメーション制作:日本アニメーション
制作・著作:NHK NHKエンタープライズ 日本アニメーション
©阿久井真/小学館/NHK・NEP・日本アニメーション
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