©Akinori Ito

3rdアルバムはジャズのスタンダードにもチャレンジ!

 昨年の前作『Mélancolie』は、フランスをテーマにドビュッシーなどの名曲を奏で、その優しい音色が注目された。そのイメージがあるので、Cocomiの新作『Neos』からの先行シングル“テイク・ファイヴ”を聴いた時、太く力強いフルートに驚いた。今度のテーマは、ジャズなの?

「もともとジャズは好きで、子供の頃から聴いていました。アルバム制作においてあったのはカプースチンのトリオを録りたいというアイディアでした」

Cocomi 『Neos』 ユニバーサル(2024)

 ウクライナ出身の作曲家カプースチンの作品にはジャズの影響が反映されている。そんな彼の“フルート、チェロとピアノのための三重奏曲 Op. 86”が制作の出発点となり、編成を変えつつ、同じくジャズの影響を受けたチェコ出身の作曲家マルティヌーの“フルートとヴァイオリンとピアノのためのソナタ H. 254”も演奏。この2曲にジャズの名曲が挟まれるカタチで編成されている。

 「カプースチンもマルティヌーも自由にメンバーを組んでいい学校の室内楽の授業で知ったので、この室内楽の楽しさをアルバムに入れたいという思いがまずひとつ。さらに昔から親しんできたジャズのスタンダードは、萩森英明さんの編曲で演奏しています」

 室内楽の楽しさは、新進気鋭のチェリスト佐藤晴真、気心知れたヴァイオリニスト東亮汰、さらに初共演のピアニスト山中惇史で再現し、その一方で、スタンダードは、山中惇史と2人で演奏しているが、当初は、新たな挑戦に模索の時間が続いたそうだ。

 「萩森さんにクラシックの作曲家の視点でジャズを作曲したり、編曲したら、こうなるだろうと考えて編曲しました、と言われてから山中さんと私の音色がまず変わりました。山中さんは天才的な頭脳を持っている方。萩森さんからさらにもっと自由でいい。僕の譜面になくても、好きなところで間を作ったりしても大丈夫とアドバイスされたところから、山中さんとの間で起きた化学反応がとてもおもしろかったです」

 “テイク・ファイヴ”では複雑なリズムを操り、スリリングにスウィングしていくが、他の2曲は、一転して甘いラヴソング。まるで歌うようにしなやかに奏でるフルートから、愛らしい恋のときめきが伝わってくる。それがいい。

 タイトルの『Neos』は、ギリシャ語で〈新しい〉という意味。前2作のイメージをいい意味で覆し、まだいろいろな面を隠し持っているんだろうなと想像させる3rdアルバム。12月のリサイタルへの期待感も膨らむ。

 


LIVE INFORMATION
Cocomi リサイタル『Neos』

2024年12月9日(月)大阪・住友生命いずみホール
開場/開演:18:30/19:00

2024年12月10日(火)東京・紀尾井ホール
開場/開演:18:30/19:00

■出演
Cocomi(フルート)
東亮汰(・ヴァイオリン)
山中惇史(ピアノ)
ほか

公演詳細:https://www.amati-tokyo.com/topics/news/2408231016.php