マルチなジャンルの音楽が矢継ぎ早に飛び出してくる、半端ない情報量に圧倒!!

 スーパーヒーロー、スパイダーマンとして活躍するティーンエイジャー、マイルス・モラレスが、マルチバース(並行宇宙)にいる別のスパイダーマンたちと共闘するアニメ・シリーズ第二弾「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」は、一本の映画にどれだけのジャンルを詰め込めるかに挑戦したかのような作品だ。というのも、マイルスがひとつの宇宙を訪れるたびに、絵柄や背景が別の作品であるかのように変わっていくのだから。サウンドトラックも例外ではない。ヒップホップからテクノ、パンクロック、ラーガ音楽、オペラと、考えられる限りのジャンルが矢継ぎ早に飛び出してくる。飽和状態になって今にも爆発しそうな情報量には圧倒されること間違いなしだ。

DANIEL PEMBERTON 『Spider-Man: Across The Spider-Verse (Original Score)』 Sony Classical/ソニー(2023)

 常識的な考えだと4~5人の作曲家が必要と思われる、そんなスコアをひとりで手掛けたのは、「シカゴ7裁判」や「愛すべき夫妻の秘密」といったアーロン・ソーキン作品で知られるダニエル・ペンバートン。フル・オーケストラも自在に操る彼だが、もともと16歳のときにピート・ナムルックのレーベルからエレクトロ系アーティストとしてデビューした人だけあって、今作ではこうしたルーツを存分に発揮。それぞれのスパイダーマンのテーマ曲が特定のジャンルのパスティーシュなのに対して、ヴィランであるスポットのテーマ曲がアンビエントだったりするセンスにもニヤリとさせられる。実は本作、ヒップホップ界のトップ・プロデューサー、メトロ・ブーミンがプロデュースし、ジェームス・ブレイクやフューチャーが参加した挿入曲集も別に存在するのだが、そちらのサウンド・デザインともズレがなく、しっかり同一宇宙の音楽として聴ける点も評価したい。

 ブライアン・イーノとの共演作もあるレオ・エイブラハムズによる空間を意識したギタープレイや、英国DMC大会の2004年大会チャンピオン、DJブレイキーによる超絶スクラッチも聴き逃せない。