〈超カッコ良くて、めちゃおもしろい〉音楽をお探しなら、ターバン姿の紳士にお任せ! 踊れて笑えてグッとくる――この新作はきっと世の中を明るくする!!
根っこにあるのはオーセンティックなファンク、ソウル、ディスコなど。濃密でしなやかなバンド・グルーヴと共に放たれるのは、ナンセンスでコミカル、そして、ややシニカルな視点を感じさせる歌。2021年の配信EP『セーラ☆ムン太郎』でメジャー・デビューを果たしたマハラージャンは、〈超カッコ良くて、めちゃおもしろい〉音楽性と〈ターバン&スーツ〉の奇天烈なヴィジュアルによって音楽シーンに独自のポジションを手にしつつある。
「やりたいことはずっと変わってないですね。以前はまったく歌詞に興味がなかったんですけど(笑)、なんだかんだ歌詞の印象が強いみたいなので、そこはちゃんとやらなきゃなと思ってます。〈歌詞や曲名が極端で、音はカッコいい〉というのは意識的に守ってるし、たぶんそれがいちばん得意なんだろうなと」。
そんなマハラージャンは、2022年に東京・LINE CUBE SHIBUYA、2023年に東京・日比谷野外大音楽堂でワンマンライヴを成功させるなど、ライヴ動員も右肩上がり。ダンス・ミュージックとしての機能の高さ、外見とは真逆の(?)ストイックな演奏はまさに一見の価値ありだ。
「自分のなかで大きかったのが、去年の〈ARABAKI ROCK FEST.23〉。“持たざる者”をお客さんがめっちゃ歌ってくれて、〈ライヴって、こんなに盛り上がるんだ?〉と感じて。コロナ中のデビューなので、そういう経験をしてなかったんですよ。その後の〈VIVA LA ROCK 2023〉や野音のワンマンもすごく手応えがあったし、もっとライヴをやりたいですね。その経験が制作に活かされてるかと言えば、わからないんですけど(笑)」。
「曲を作っていて〈これは良くなりそうだな〉という判断が早くなってきた。ちょっとは成長しているんだと思います」と語るマハラージャンの新作は、メジャー・サード・アルバムとなる『ミーンミーンミーン☆ゾーンゾーンゾーン』。1曲目の“蝉ダンスフロア”は、「自分がやりたいことがしっかり形にできた」という渾身の1曲だ。
「アナログ・シンセのファンクがすごく好きなんですよ。メジャー・デビューしてから何台か購入したんですけど、それを使って自分なりのカッコいいファンクをやりたくて。“蝉ダンスフロア”はひとつの集大成になっていると思います。歌詞は(蛹化するまで土の中にいる)蝉とコロナ禍の3年間をかけてます。トラックが出来たときに〈蝉ダンスフロア〉って適当に歌っていたのがきっかけだったんですけど、もうちょっと普遍的なモチーフにしたほうがよかったんじゃないか、という気もしてます(笑)」。
“ラジオネーム オフトゥン大好き”は、マハラージャンが敬愛するケンモチヒデフミとの共作によるエレクトロ・ファンク・チューン。
「昔から変わった歌詞でカッコいい曲をやっている人たちに惹かれていたんですけど、水曜日のカンパネラはまさにそうですよね。“ラジオネーム オフトゥン大好き”はいくつかのタイトルの候補からケンモチさんに選んでもらって、トラックも作っていただきました。ケンモチさんのスタジオへお邪魔して、歌詞やフロウを一緒に作れたのもよかったです」。
リード曲“ゾーンに入ってます。”は、90年代オルタナティヴ・ロックの匂いを感じさせるナンバー。〈ゾーンに入ってます〉をリフレインする歌詞のインパクトを含め、 彼の〈カッコいい × おもしろい〉というスタイルの(現時点における)最高到達点と言えるだろう。
「デモの段階からスタッフの皆さんも〈これはいい!〉と盛り上がってました。最初のアレンジはもっとロックというか、レッチリっぽい感じだったので、よりポップな雰囲気に持っていこうと思ってましたね」。
さらにTVアニメ「トモちゃんは女の子!」のOPテーマ“くらえ!テレパシー”や、ボーナス・トラックとしてブラック・ビスケッツ“タイミング”のカヴァーも。踊って笑えてグッとくるマハラージャンの音楽は、誰もが楽しめるポップソングとして世の中に響く可能性を存分に秘めている。今回のアルバムを機に、さらなる本格的なブレイクを大いに期待したい。
マハラージャンの過去作。
左から、2020年作『いいことがしたい/ちがう』(油田LLC)、2022年作『正気じゃいられない』、2月7日にアナログ盤がリリースされる2021年作『僕のスピな☆ムン太郎』(共にソニー)
マハラージャンが参加した近年の作品。
左から、鈴木雅之の2023年作『SOUL NAVIGATION』(エピック)、西寺郷太の2023年作『Sunset Rain』(GOTOWN)