2023年のマーチンがナヴィゲートするものは〈音楽を楽しみたい〉という心! 仲間たちと独自のファンクを追求した新作は、いまの時代に生きる人々をダンスフロアへと誘う!!
絶好調が続くマーチン
去年の夏、〈フジロック〉での鈴木雅之が、いかにまぶしかったか。
洋楽やロック好きのオーディエンスが多いフェスのステージを自分の色に染め上げてゆく歌声と名曲の数々に酔いしれた。シャネルズでのデビュー曲“ランナウェイ”から現在に至る自身のキャリアをたどるだけでなく、日本の名曲カヴァー集〈DISCOVER JAPAN〉シリーズでも取り上げていた槇原敬之“SPY”やYOASOBI“怪物”なども圧倒的な説得力を放ち、最高のサマー・アンセム“ガラス越しに消えた夏”で1時間をきっちりと締めた。大ヴェテランならではの貫禄のなせるワザ……なのだが、それだけじゃないな。
親子、いや、もしかしたら祖父と孫ほど歳が違う観客を相手にしても、〈兄貴〉と呼びたくなる自然体のかっこよさが、存在から溢れていた。日本のポップスが〈J-Pop〉と呼ばれる前からこの道のトップランナーとして生きてきた大ヴェテラン〈鈴木雅之〉という大名題に甘えず、音楽好きのやんちゃな少年〈マーチン〉が、いまもこの人の中に活き活きとある。そこに感激させられてしまった。
「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦」オープニングテーマとなった“ラブ・ドラマティック”(2019年)を皮切りにアニソンの世界に参入し、長年のファンもアニメ・ファンも両方仰天させたことも記憶に新しい。その後も〈かぐや様〉シリーズとの縁は続き、3月29日には高城れに(ももいろクローバーZ)をフィーチャーした最新シングル“Love is Show”を発表。還暦を過ぎてから〈アニソン界の大型新人〉としての新たなキャラクターを獲得したのは本当にすごい。単に仕事に恵まれた奇跡の展開というだけでない。彼自身の新しさへの貪欲さが、無理のない自然さで表現されているからこその大ブレイクだろう。2020年からの「紅白歌合戦」3年連続出場は、そうした人気っぷりの証左たる出来事でもあった。
そのように何度目かの絶好調期にある鈴木雅之が、4年ぶりとなるニュー・アルバムを完成した。タイトルは『SOUL NAVIGATION』。前作にあたる『Funky Flag』(2019年)でも交友関係の広さをフル回転した作家陣によるカラフルな作風に驚かされたが、本作の中身はいかに。