Photo by Elizaveta von Stuben

コンテンポラリー・ジャズの異才であることを知らしめる、広角型にして壮大な新作を鋭意リリース!

 ビートが立っているだけでなく、プログラム音楽流れのバラけ感をしっかり抱えていること。ギタリストを効果的に使えること。様々な音色に自覚的であること。個あるシンガーを起用してインスト・ビヨンドの親しみやすさや言葉があるがゆえの訴求力を追求すること。ストリングスを巧みに用い浮世離れしたチェンバー音楽的瀟洒さを取得すること。これらは現代ジャズを具現しようとする際の有効な手段だが、なんとこのアルバムはそうした項目を全部抱えてしまっているではないか! しかも、それら多項目は乖離せず、今を闊歩する秀逸なピアニストの実像に結晶しているのだから。

TAYLOR EIGSTI 『Plot Armor』 GroundUP Music/コアポート(2024)

 新作『プロット・アーマー』にも録音参加しているジュリアン・ラージとともに西海岸の早熟ジャズ仲間としてかつてならした(その初来日は2009年、ラージとのデュオだった)アイグスティの新作は、スナーキー・パピーを率いるマイケル・リーグのレーベル〈グラウンド・アップ〉からのリリースだ。その経路も、彼が抱えている多様性を率直に表出することを助けたか。

 アイグスティはドラマーのケンドリック・スコットやシンガーのグレッチェン・パーラトなど現代ジャズの名士たちのサポートで何度も来日しているミュージシャンズ・ミュージシャンでもある。今回、彼は付き合いのある逸材たちに声をかけて自在に各人を曲に振り分けて――その様はマイケル・リーグの作法を思い出させようか――絵巻的な流れを得た本盤は、次はどんな曲が出てくるのというワクワクとともに聞き手を誘う。テレンス・ブランチャードらの管ソロも訴求性アリだ。

 昨年亡くなったウェイン・ショーターや逝去した母親に捧げた曲を含むすべての楽曲はパンデミック後に書かれたもの。人間的な心持ちが投影された、多彩なフックを抱えるフレッシュな曲群は外へと鮮やかに向かう。かような『プロット・アーマー』で、テイラー・アイグスティのリーダーとしての評判はおおいに上がるのではないだろうか。