©Cal McIntyre

This Is Overture
2024年のブレイク最有力候補として、すでに熱視線を集めているUKの5人組バンドが超待望の初アルバム『Prelude To Ecstasy』を完成! カラフルに味覚を刺激する最後の晩餐が提示した恍惚への前奏とは?

THE LAST DINNER PARTY 『Prelude To Ecstasy』 Island(2024)

 

遠慮知らずなまでのポップネス

 BBCの〈Sound Of 2024〉で1位、ブリット・アワードの新人賞受賞と、本国イギリスの音楽業界から最大限の期待が寄せられている新鋭バンドのデビュー・アルバム『Prelude To Ecstasy』は、一部からのハイプとの声を華麗に一蹴する傑作だ。さまざまな時代のロックのエッセンスだけではなく、クラシックやオペラまでも内包した目くるめくサウンドは、どこまでも壮大かつドラマティック。本人たちも公言する〈シアトリカルでマキシマリスト的な嗜好〉はブラック・カントリー・ニュー・ロードやブラック・ミディに代表されるサウス・ロンドンの血統を部分的に継承しているが、アンダーグラウンド主義的な同地の先人たちが意図的に距離を置いてきた、遠慮知らずなまでのポップネスを持ち合わせていることが彼女たちの新しさであり最大の強みである。なかでも、ブライアン・メイからグレアム・コクソンやジミー・ペイジまでも想起させるエミリーの多彩かつビッグなギター・プレイの新鮮さは特筆に値するだろう。もし今後、英国インディーが熱心でロイヤルなファンベースを超え、ふたたび大きな文化的波及力を持つことになったとしたら、そのひとつの起点はこのアルバムだったと言われる可能性さえ秘めている。 *小林祥晴

 


ハイプじゃない実力を証明した一作

 かつて〈ブリット・ポップ〉時代の到来を決定づけた名盤たちの登場からちょうど30年……多彩な動きをわざわざ結びつけて語る必要はないのだが、レジェンドたちもさまざまな形で元気に動いてみせてくれている昨今だからこそ、新進気鋭のニューカマーたちが層の厚さを見せてくれるたびに盛り上がってしまうのだ。そんな2024年の大ブレイクが期待されるロンドン出身の5人組がラスト・ディナー・パーティー。翳りのあるキャッチーさを備えたギター・ポップ“Nothing Matters”をきっかけに着々と話題を広げてきた存在感のデカさは、このナルシスティックな表題を冠されたファースト・アルバム『Prelude To Ecstasy』によってハイプならざる実力を証明するはずだ。芝居がかった大仰な導入からグッと引き込まれ、意匠の壮大さとシンプルなメロディーメイクを折り重ねたバンド・サウンドに、忘れていた快感を呼び起こされる人は世代を問わず多いのではないだろうか。多彩な出自とルートを通って、スタイルを問わず頼もしいロック・バンドが続々とメインストリームに参入している現在、何か賑やかなことが起こりそうな気がしなくもない。 *狛犬