
〈誰そ彼時、彼は誰時〉に僕らは生きていた
――では初アルバム『From Dusk Till Dawn』について聞かせてください。まずタイトルは〈黄昏から彼誰まで〉の英訳とのことですが、これについて教えてください。
「そもそもは〈夕暮れや夜明けの帯の空がきれいだよね〉とメンバーで話していたんですよ。それから直人が〈誰そ彼(黄昏)時、彼は誰時というきれいな日本語がある〉と教えてくれて。
その〈誰そ彼〉と〈彼は誰〉から展開して、2022年にLIQUIDROOMの2Fにあるギャラリー・KATAで〈who dat be?〉、2023年に渋谷LUSHで〈who is he?〉、青山月見ル君想フでの〈in His Daze〉と〈Am I Dreamin’?〉という自主企画を開催しました」
――なるほど。
「言葉が示す夜7時あたりから朝の5時くらいまで、まさにHALLEYが継の家で音楽を作っていた時間帯。その時にこそ僕らは生きていました。だから、その瞬間が等身大の自分たちを詰め込む、最初のアルバムを象徴するタイトルにふさわしいと思ったんです。それに合わせてアートワークも茶色のグラデーションにしました。
それと対になるのが、1曲目に収録した“Daydream”やリリースツアー〈Daydreaming〉。〈From Dusk Till Dawn〉とは真逆な日中の時間帯ですけど、フワフワと夢を見ているという感覚は似ている言葉です」
――しっかりしたコンセプトだなと感じました。そして〈今はアルバム単位ではなくプレイリスト的に聴かれる時代だ〉という、よくある言説とは相反する考えですね。
「もちろん僕らもプレイリスト的な感覚で音楽は聴きますよ。アルバムで聴かれなくなる曲がある問題についても考えましたが、結局は〈捨て曲を作らず、全部いい曲にすればいいんじゃない?〉というところに落ち着きました(笑)。
コンセプトに沿って作曲してはいませんが、全体のテーマがありつつ各曲にパワーがあるのがこのアルバムの特徴かなと思います」

〈愛〉というモチーフはラブソングの範疇に収まらない
――てひょんさんも影響を受けた聖書には〈憤ったままで日が暮れるようであってはいけません〉という言葉もあります。それを踏まえると、黄昏とは怒りについて自分を吟味する時間でもありますよね。様々な〈怒り〉があふれる現代において、とてもクリティカルだとも感じました。
「自己完結的な怒りではありますが、“’Cause It’s Too Cold To Walk Alone”や“Lemonade”はそうかもしれませんね。そういう解釈も聞けると嬉しいです」
――全体としては感情の機微が歌われている曲が多いとも感じましたが。
「確かに自虐もあれば、自分を肯定したり啓蒙したりする内容もありますね。ただ感情的なスウィングのなかで、色々な形を示す曖昧な言葉としての〈愛〉が各曲に共通して込められていると思います。例えば恋人への愛や親から子、子から親への愛、動物や物に対する愛着などはそれぞれ別のものですし、〈愛〉というモチーフはラブソングの範疇には収まらないものだと思うので」
――ミックスのこだわりなどもあれば教えてください。
「色々な手法を試しましたし、こだわってない箇所がないですね。例えば“Who Is He?”は録り音のドラムのキックとスネアだけをサンプルで打ち込んで、ハットは生で叩いてドランクビートにしました。楽器隊はそれとは違うグリッドのリズムで演奏していて、試行錯誤に時間がかかりましたね。ボーカルもリバーブにサイドチェインをかけて、空間をすっきりさせるように工夫したり。音楽的にできることは全部やったと思います」