©Camilla Greenwell

歴史を歩む南米ギター曲の魅力

 1992年エディンバラに生まれ、スコットランド王立音楽院、グラーツ芸術大学、さらにはイタリアで研鑽を積んだギタリストのショーン・シベ(志辺)は、ペンタトーン・レーベルから意欲的にアルバムをリリース中。最新作は2023年にスコットランドで録音された『信仰』で、ヴィラ=ロボス、バリオス、ヒナステラという3人の南米の作曲家に焦点をあてた。

SEAN SHIBE 『「信仰」~南米作曲家のギター作品集』 PentaTone Classics/キングインターナショナル(2023)

 「単に南アメリカの作曲家のギター曲を集めるというコンセプトではなく、ここに集められた作品を通し、南アメリカ音楽の歴史的な展望、そこに影響を与えたヨーロッパの音楽、その影響をそれぞれの作曲家がどのように自作の中で表現したかを、僕の演奏を通じて知って欲しかったのです」

 とシベ。ヴィラ=ロボス“バッハへのオマージュ”(5つの前奏曲第3番)に始まり、バリオス“大聖堂”を経て、ヒナステラ“ギター・ソナタ”に至る道は、まさに発見に満ちた旅となっている。

 「演奏が難しいとされるヒナステラ作品だけでなく、比較的有名なバリオス作品も技術的には〈隠れた難しさ〉を持っています。そうした発見の中に、南米のギター音楽の魅力が多くの聴き手に伝われば良いなと考えました」

 もちろんその演奏も素晴らしいもの。敢えて言えば暴力的にすら感じられる演奏もあり、繊細な音色の美しさから、クラシカルギターの限界に挑むような激しさまで感じさせる彼の演奏の振幅も今回の録音の魅力である。

 また、アートワークも興味深い。

 「今回のアルバムはバリオスの“大聖堂”の冒頭に登場するモンテビデオ(ウルグアイ)の大聖堂の伽藍の画像をもとに、南米の大自然を思わせる植物と、さらには僕自身のポートレートを重ねて作りました。やはりアートワークもアルバムを楽しんでもらうための重要な要素のひとつ、と考えているので、いつもこだわりますね」

 以前には、カリム・スレイマン(レバノン系アメリカ人のテノール)とのルネサンス時代から現代アラブ圏の作品を集めたアルバム『折れた枝』、ヒルデガルト・フォン・ビンゲンとモダン・ジャズを組み合わせた『ロスト・アンド・ファウンド』、そしてファリャ、モンポウ、サティ、ラヴェルという組み合わせによる『巡礼』と、非常に意外な、同時に深い関連性を感じさせる作品を集めたアルバムをリリースしており、他のギタリストとは違う独自のアイディアで時空を超えた音楽世界を展開している。日本でも彼の実演に触れるチャンスが多くなることを願う。

 


INFORMATION
ショーン・シベ 公式ホームページ
https://seanshibe.com/