ピノ・パラディーノの娘であり、セッション・アーティストとしてジェシー・ウェア、サンファ、ジェイ・ポールら多くの才人と仕事をしてきたファビアナ・パラディーノのファースト・アルバム。リヴァーブが深くかかったビッグなサウンド・プロダクションを特徴とする本作は、レトロな雰囲気を醸している。初期のマドンナやチャカ・カーンが脳裏に浮かぶ曲群を聴くと、MTVが開局した80年代に迷い込んだような感覚に包まれる。そうしたレトロさがありつつ、数多の要素を1曲の中に織り込めるセンスはモダンだ。それゆえ焼き直しに聴こえることはなく、郷愁的なのに新鮮というおもしろい聴体験をもたらしてくれる。