荒川大輔によるソロ・プロジェクト=SPRINGMANが、初の全国流通盤となるミニ・アルバム『SCREW』をリリースする。とても親しみやすく、かつ捻りの効いた魅力的なストレンジ・ポップを届ける彼が音楽の道を志したのは中学の学園祭がきっかけ。「ビールのCMで身近だった長渕剛さんの“乾杯”を初めて人前で演奏して拍手をもらえた。そこでスポットライトを当てられた経験がすごく心地良かったんです」と明かす。
地元・栃木でやっていた路上での弾き語りライヴを経て、2018年12月に東京で結成した念願のバンドが3ピースのSPRINGMANだったが、2021年末にメンバーの脱退を受け、荒川はソロ回帰を決意。ひとまず「一年間くらいはお金を貯めようと思った」との考えから一時的に就職を選ぶも、働くなかで応募してみた〈murffin AUDITION 2021-2022〉で見事グランプリを獲得、予定外の早さで本格的に音楽活動を再開することになった。SPRINGMANの名はそのまま、〈シンガー・ソングライター〉とは謳わず、サポート・メンバーを迎えながら、いまなおバンドマンらしい音を鳴らしている。
「やっぱり弾き語りじゃ出せない、バンドならではのエネルギーがおもしろいんですよね。幼少期に母の車でよく流れていた奥田民生さんの影響も大きいと思います。SPRINGMAN(バネ男)という名前は、僕がアメコミのヒーローを好きで、スパイダーマンとかアイアンマンみたいなアーティスト名にしたいと考えていたときに、自分のルーツになっているユニコーンのアルバム『SPRINGMAN』とマッチしたんです。父の仕事の関係上、工業製品に囲まれて育ったので、バネにそもそも愛着があって(笑)。シンプルに形がカッコいいし、〈バネ定数〉のように物理の授業に登場するくらい力の源ですから。そのパワフルな感じ、どれだけ凹まされても跳ね返せる感じに惹かれました」。
そんなバネ男が紡ぐ新作は、パワー・ポップ調のラヴソング“カポック”、ピアノのブギウギっぽく入ったアレンジがユニコーンの“スターな男”を彷彿とさせる“心境”、「コンガやウクレレやカズーなどを使えて楽しかった」という“雨降り休日”、SPRINGMANとして初めて作った曲ゆえに今回も3ピースのスタイルで録った“勤労”など、全6曲を収録。色とりどりのサウンドの一方、彼の人間性が滲む歌詞も愛らしくて素敵だ。
「完成してみてわかったのは、どの曲も〈迷い〉を歌っているんですよね。迷ってる時間、頭で考えてる時間を、言葉や音にするのがいちばん好きなんだろうなって。メッセージを狙って込めるなんてできないし、正直な気持ちを書くことしかできないうえで、必死に悩み抜いた結果、こうなった感じです」。
照れ臭そうに話す姿からは、カポックの花言葉どおりの〈実直さ〉が伝わってくる。本当はシャイな性格でありながら、誰もがつい隠したくなるような自分のカッコ悪い部分を飾らずに描いているのがいい。
「嘘をついてる歌詞のほうが恥ずかしくて、憤りさえ覚えますね。お前そんなこと思ってねえだろって。だったら〈辞めちまえば?〉とみずからに歌う“右にならえ”のほうが、自分が言われてキツい内容の歌詞だとしてもリアルでいいんです。『SCREW』は〈ネジ〉という意味なんですけど、家具とか家電とかみんなの日常にさりげなく溶け込んで暮らしを支えているネジのあり方が好きで付けました。僕の曲もそうやって寄り添える存在でありたい。同じように迷う人はきっといるはずだし、最後には上手くいくと信じるSPRINGMANの曲でちょっとは楽になってもらえたら嬉しいです。気持ちがしんどいときは、特にリード曲の“エスケープコール”をぜひ聴いてください!」。
SPRINGMAN
栃木県壬生町出身の荒川大輔によるソロ・プロジェクト。2018年12月から活動をスタートし、現在は東京を拠点に各地で精力的にライヴを重ねている。2022年にmurffin discsが主催するオーディション企画〈murffin AUDITION 2021-2022〉でグランプリを受賞し、同年に初シングル“さよなら北千住”を配信で発表。その後も“カポック”“とりとめもなく”などコンスタントに配信での楽曲発表を続け、4月10日にファースト・ミニ・アルバム『SCREW』(murffin discs/TALTO)をリリースする。