4歳からヴァイオリンを始め、武蔵野音楽大学卒業後にフランスで研鑽を積み、2002年からは名門バークリー音楽大学でジャズを専攻。ジャンルの垣根を超えた躍動感あふれるプレイで音楽シーンを華麗に駆け抜ける牧山純子が、クラシックとジャズの融合をテーマとする〈Classical Trio〉プロジェクトの新作をリリースした。
男子2人に支えられ、より深化したClassical Trio
――2022年11月に前作『Classical Trio』をリリースされた当時のMikikiのインタビューで、最後に続編のお話をされていましたが、その予告通り待望の第2弾アルバムの登場ですね。
「応援してくださった皆さんのおかげです。今作では原田達也さん(ピアノ)と中林成爾さん(チェロ)の〈同級生トリオ〉に加えて岡本健太さんにパーカッションとドラムで参加していただき、ジャズの要素で重要な打楽器によるグルーヴを確保してパワーアップしました。厚みのあるサウンドでクラシックとジャズの融合を更に深化させてお届けします」
――収録曲の殆どがクラシックの名曲たちですが、タイトルでイメージして聴き始めると良い意味で裏切られるというか……最後まで何が飛び出すかわからない、とても楽しいアルバムです。
「決してマニアックな世界ではないので、面白がって聴いていただけたら本望です。ジャズって――クラッシックも同じですが――熱心なファンの中には厳しい方もいて〈これはジャズじゃない〉とか〈ここまでは許せる〉みたいな議論が展開されたりしますが、ここでは馴染みのある名曲がジャズのアレンジで料理され、より食べやすくこんなにも美味しくなるんだっていうのを味わって欲しいのです」
――確かに〈ジャズとは?〉っていつも難題ですよね。
「もう全部が正解って気もします。日本人の私たちはアメリカの文化的なアイデンティティを持たないし、黒人の〈魂の叫び〉とも無縁です。
ただクラシックをずっと学んできた者としては、譜面に書かれたコードを自由に演奏して毎回違っていいのがジャズの魅力ですね。特にライブでは〈今日はこう弾きたい〉っていう自由なフィーリングを会場のみんなと共有できるのが楽しい。それがジャズという音楽ではないかと」
――〈Classical Trio〉という名前なのでクラシックファンの目も惹くのでは?
「そうであって欲しいです。だって、所謂ジャズのピアノトリオとは違うわけですし。私は米国留学中に小澤征爾さんの薫陶を受けたのですが、〈お店(CDショップ)ではジャンル分けが必要だろうけど、クラシックとかジャズとかカテゴリーはいずれなくなるよ〉って仰っていたのがとても印象深くて、それならジャンルに関係なく私の好きな音楽をやろうって心に決めたのです」
――メンバー同士の関係性も前作より深まってそうですね。
「以前と比べて3人の役割分担がうまく出来るようになってきたと感じます。ここは自分が責任持つ、ここは甘えていいとか、割と自然に。まあ実感としては私が真ん中で男子2人に支えられてる組み体操みたいな感じですが(笑)」
――アレンジのアイデアはどなたが?
「一応私が地図を描いて、細かいディテールは決めず実際に音を出しながら色を付けていく感じです。ピアニストとチェリストのそれぞれに得意分野があるので、お互いに意見を出し合いながら……同級生なので遠慮なく出来るのがいいですね。その辺りはコロナ禍で仕事がなくなった時に3人で私の家に集まって、音大の練習室か部室かみたいに練習しまくったことがベースになっているかもしれません」