バイオリニストの牧山純子が、ニューアルバム『Classical Trio』を2022年11⽉23⽇にCDでリリースした。クラシックの名曲を牧山自身がジャズアレンジし、同い年の原⽥達也(ピアノ)、中林成爾(チェロ)とのトリオでいきいきと演奏した本作。牧山純子ニュー・プロジェクト名義の前作『ALEGRIA』(2020年)とも前々作『ルチア~スロベニア組曲』(2017年)とも異なる、ジャンルを越えた、新たな牧⼭純⼦の世界が展開されている。そんな渾身の新作『Classical Trio』について、リリースツアーの開催を目前にした牧山に話を訊いた。インタビュアーは、彼女と演奏の場をともにしてきた知己のジャズピアニスト、西山瞳に務めてもらった。 *Mikiki編集部
バイオリンで奏でるジャズとクラシックの融合
――11月の発売日から少し経ちましたが、反響はいかがですか?
「誰でも聴いたことのあるクラシック曲のジャズアレンジ作品ということで、プレゼントに買って下さったり、人に勧めやすいと言われたりします。それは今までになかったことですね。
生活の中に流れていても邪魔にならないし、眠れるなどのお声も頂いています。最良のBGMになってくれればという気持ちもあって作ったので、自分が思った通りにできたのかなと実感して、嬉しいですね。
また、有名曲ばかりなので、小さい時に聴いたとか、合唱コンクールで歌ったとか、〈この時代に聴いた〉っていう思い出をファンの方はよく話してくれますね」
――ジャズにおいて、バイオリンは管楽器に比べてプレイヤーも少ないですが、現場で苦労されることはないですか?
「〈小さい頃からの英才教育が必要〉とか、〈楽器のお値段がそこそこする〉というイメージがあるので、ジャズライブハウスなどお酒のあるところで弾くのは、まあ少し異色なんだろうなと、やればやるほど感じます。けれど、ここ最近は、プレイヤーも価値観も幅が広がって、随分やりやすくなったように感じますよ。
バイオリンの奏でる音楽に触れる最初の機会は、大半がクラシックやオーケストラのホール鑑賞だと思います。だから、どちらかというとジャズというよりバイオリン自体のファンで、クラシックの延長で聴いて下さる方も多い。
そういう方々がライブに来て下さると、ジャズライブというよりは演奏会という感じで、ライブハウスの雰囲気とかお料理とかを全部ひっくるめて、楽しんで下さっています」
――今回のアルバムは、楽譜出版の需要もあるのではないかなと思いました。近年大人からバイオリンに挑戦する方も多く、クラシックとジャズの両方に興味がある方の入り口として良いのではと。
「前のアルバムに収録した“スロベニア組曲”は、〈クラシックとジャズの融合を〉と思って書いていた曲なので、いつか楽譜を出して、音大生などに弾いてもらえたらいいなと考えています。最初は書き譜を演奏して、いつか即興にもトライしてもらえたら。
私自身、アメリカに行って、ほぼ何も書いてないような楽譜でアドリブをしなきゃいけないとなった時に、〈譜面さえあれば簡単なのにな〉といつも思っていました。もっと気軽にジャズに触れてほしいけれど、ピアノの譜面は沢山あるのに、バイオリンになると譜面があまりない。
年配の方がバイオリンを始めて、ちょっと軽くジャズも弾いてみたいな、という人口を増やしたい気持ちはあるので、いつかそういうこともできればと思います」