音楽評論家である著者が、インターネットにより誰でも口コミを発信できるようになった現在、改めて〈音楽評論とは何か〉を問うため、明治以来の膨大な数の音楽評論を読み直し、特記すべき評論を紹介、解説した一冊。明治期に新聞の社説に音楽記事を書いた福地桜痴、日本初の音楽雑誌を発刊した四竈訥治、大正リベラリズムが生んだ日本初の音楽評論家・大田黒元雄、〈芸術作品としての評論〉を目指した遠山一行、虚心坦懐に聴くことを通じその価値を発見する吉田秀和など、真摯に言葉を紡いできた先人たちの営みが紹介される。音楽評論を考える上で極めて示唆に富み資料性も高く、吉田秀和後の続編も期待したい。