2029年まで首席指揮者の任期を延長、まさに脂の乗った協調ぶりをディスクでも聴かせている大注目コンビのブルックナー。3種の稿を同梱した充実の第4番(2020年録音)に続くこの第9、期待に違わず、バンベルク響の重心低いソノリティを活かしたその直球ぶりが聴き手の耳を思わず惹きつけずにはおかない。むしろ原始霧の茫洋から明瞭な造型を鋭敏に描出するアプローチを用いながらも、第1楽章冒頭での筆致や第3楽章の荘重描写などで繰り出されるブルックナー特有の剛性とも言うべき音の質感が実に魅力的。第1楽章コーダでの破滅を想起させるトランペットの警句的扱いにもフルシャの意図が見える。