アウグスティン・ハーデリッヒは、技巧は維持しつつ、音色は深く熟成した中低音が心地よいヴァイオリンを聴かせている。彼は84年生まれの36歳。私が彼の演奏を演奏会で聴いた時は古典のハイドンと現代音楽のアデスのヴァイオリン協奏曲の2作品を素晴らしい技巧、透明な音色で一気に弾いて驚かされた。数年経て聴いたこの『ボヘミア物語』。ドヴォルザークの協奏曲は、81年生まれの39歳の指揮者フルシャと共演。良い意味で年齢に似合わぬじっくりと濃密で大きな音楽を奏でている第2楽章が白眉。ヤナーチェクのヴァイオリン・ソナタは滲み出る情感と滴る美音を駆使した名演奏だ。