歌の世界に新しい風を。気鋭の歌手がデビュー
カウンターテナーとして活躍を始めている上村誠一が、気鋭の若手奏者のアルバムをリリースする〈Opus One〉レーベルからデビューを飾った。まず選曲が意外性に満ちて面白い。「大学時代からイギリス歌曲には興味があったのですが、今回選んだヴォーン=ウィリアムズの“沈黙の真昼”はコンクールで出会った曲でした。僕ではなく、コンクールで切磋琢磨した女性が歌っていたのですが、その歌がとても心に響き、コンクール後に彼女に声をかけて一緒にリサイタルをすることになったほどです」
オズヴァルト・ヴォルケンシュタイン(14世紀)からJ・S・バッハ(BWV 170-1)は近年のカウンターテナーのレパートリーとして取り上げられるものだが、さらにクィルターとヴォーン=ウィリアムズ、そして日本歌曲が3曲と、かなり幅広い。「日本歌曲に関しては、高校時代の合唱活動が原点ともなっています。僕のいた合唱部ではコンクールに出場する時に、自由曲を現代の作曲家に委嘱して歌うという活動をしていました。それがきっかけとなって作曲家の方と知り合うことも出来たのですが、自分がソロになっても、やはりリサイタルのたびに歌曲を委嘱して歌って行こうと考えています。今ある作品を歌うのも当然ですが、常に新しい作品を生み出して行き、それを歌い継いで行くのも自分のライフワークにしたいと考えています」
今回は面川倫一“わたしを束ねないで”、松下倫士“うたを うたうとき”、中田喜直“歌をください”の3曲が選ばれた。「面川さんの作品は新川和江さんの有名な詩に音楽を付けたものですが、詩の魅力も日本歌曲を歌う時の重要な要素ですよね。今回の録音でピアノを担当してくださった松下さんの作品はまど・みちお、中田さんは渡辺達生さん。どれも詩の魅力をたっぷりと味わって頂ける歌曲です」
国立音楽大学時代に恩師から勧められ、テノールからカウンターテナーに転向。第75回全日本学生音楽コンクール全国大会声楽部門大学の部第1位を獲得し、令和6年度奏楽堂日本歌曲コンクールで第2位となった。東京混声合唱団にカウンターテナーとしては史上初のレジテントメンバーで入団。「ソリストとして歌う時も、合唱音楽に触れる時も、その形にかかわらず、自分自身のありのままで音楽と向き合うことが大きな経験をもたらしてくれると思います。それを通して、音楽の本質、歌の魅力に触れていけるように精進したいです」
LIVE INFORMATION
上村誠一ソロリサイタル Vol.2
2024年7月20日(土)大泉学園ゆめりあホール
開場/開演:19:00/19:30
曲目:宮本正太郎“カウンターテナーとピアノのための歌曲集”/“微睡の刻”新作委嘱初演 ほか
https://columbia.jp/artist-info/kamimuraseiichi/