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SNSで新曲を発表し続ける新世代ピアニスト、デッカからデビューEPをリリース!

 カナダ出身のピアニスト、トニー・アンは、1999年生まれのZ世代。自作曲をTikTokなどのSNSに投稿することで、人気を得てきた。総フォロワー数は250万人以上で、2022年に念願のメジャー・デビューを果たしている。

 「僕を見つけて欲しくて、2015年から動画を投稿してきた。それがきっかけで2年後にEDMのユニット、チェインスモーカーズから声が掛かり、共作したり、共演したりするなかで自分のキャリアが動き始めたと思ったけれど、3か月後に振出しに戻った。さすがに音楽を諦めようとまで思った」

 それでもSNSで新曲を更新し続けた。そのなかには〈Play That Word〉という独自企画があって、鍵盤にアルファベットが書かれていて、ひとつの単語をお題にその文字から弾き始めていく。

 「“LOST”というシングル曲はこの企画から生まれた。文字を見た瞬間にB♭mだなとキーが浮かぶので、そこから曲を書いていくんだ。キーとハーモニーの関係など、ある程度音楽理論を知らないと出来ないとは思うけれど、楽しいチャレンジになっている」

 音楽は、クリーブランド音楽大学でクラシック、バークリー音楽大学で作曲やポップス、ジャズ、映画音楽などを学んだ。これが彼の音楽のバックグラウンドだ。

 「12歳の時にベートーヴェンの映画を観て、作曲家になると決めた。そのために始めたピアノの勉強は、苦痛だったけれど、作曲のためと毎日6時間以上は練習していた」

 その演奏は若々しいタッチで、強弱を巧みに操りながら、ダイナミックなのが魅力だ。それを堪能できるだろうアルバムの制作を現在進めているが、その方法も今どきで、12星座をテーマに毎月書き下ろした新曲を配信。インタヴュー直後の6月21日には〈かに座〉の曲がリリースされた。

 「25年2月の〈うお座〉で12曲揃うので、アルバムが完成するという計画なんだ」

 まさにサブスクの発想。1年かけてシングルの集大成としてアルバムが完成するというわけだ。

 さて、今回の初来日公演はワールドツアーの一環。初めて日本のファンと触れ合うことになった。

 「ライヴでは握手会を行うんだけれど、そこで〈この曲で泣きました〉とか聞けるのがいいんだ」

 感情に訴えかける音楽は、イマジネイティヴでもあり、“RAIN”など曲のタイトルがその空想の旅の水先案内人になってくれるところがまたおもしろい。