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ラン・ランの新作『ピアノ・ブック2』にも参加! SNSで世界を席巻する新星ピアニスト

 再来日公演に合わせて、トニー・アンの日本独自盤『トニー・アン – ジャパン・スペシャル・エディション 2025』がリリースされた。アルバム『エモーションズ(デラックス)』と『360°』をコンパイルした2枚組になる。

 「すごくクールで、特別な作品が出来たと思っている。2つのアルバムのジャケットを合体させたアートワークも気に入っている。前回の来日公演がとてもいい経験になったので、感謝を込めて何か作りたい気持ちがあったんだ」

TONY ANN 『トニー・アン - ジャパン・スペシャル・エディション 2025』 ユニバーサル(2025)

 『360°』は、星座をテーマに毎月1曲ずつ発表し続けて完成させたアルバムだが、具体的に12星座の何が作曲のインスピレーションになったのかが謎だった。

 「星座をテーマにすると決めてから、リサーチを重ねるなかでそれぞれのキャラクターにフォーカスしようと思った。例えば、かに座は面倒見がいい性格なので、温かみのあるE♭コードがいいだろうとか。星座の特性とキーを関連づけることで作曲していった」

 トニー自身はみずがめ座で、「スローなワルツ風にしたけれど、他より時間がかかった」と話す。

 そんな彼は、99年生まれのカナダ人。作曲家になりたくて、ピアノを始めたので、レッスンは苦痛だったという。そのトニーが中国出身の世界的ピアニスト、ラン・ランの新作『ピアノ・ブック2』に参加。しかもオリジナル楽曲“イカロス”で連弾している。

 「新作用に比較的新しい曲をラン・ランが探すなかで、僕の曲が候補に挙がった。さらに連弾する話に発展したので、4本の手のためのアレンジに作り直した。レコーディングでは彼が高音のパートを担い、僕が低音の伴奏を弾いた。憧れの人が隣で弾いていたと今考えると、クールなことだよね」

LANG LANG 『Piano Book 2』 Deutsche Grammophon/ユニバーサル(2025)

 その“イカロス”は、ある配信サイトで再生4千万回も記録する大ヒットとなっている。しかもオーケストラやスリープなど複数のヴァージョンがある。

 「23年夏にひとりでLAに住んでいた時、高層階の部屋から見た、太陽が沈んでいく光景がとても美しく、即興で弾き始めたメロディから生まれた曲なんだ。その光景とギリシャ神話のイカロスの物語が僕の中で重なったので、“イカロス”と。いろんなヴァージョンを作っているのは、それに耐え得る力が曲にあるからなんだ」

 公演ではアップライトのピアノを弾き、その手元を大きく映した映像が没入感を誘った。そして、「完璧な演奏よりメロディからいかに感情を引き出し、リスナーに繋げられるかを大切にしている」という彼の言葉が思い出された。