ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー(1931~2018)は、20代の若さでソ連を代表する指揮者として活躍。ソ連の巨匠でただ一人2010年代まで生き、当時の自身への不条理な扱いを映画監督モンサンジョンへの〈証言〉として残した。彼の怒りの矛先は、音楽にイデオロギーを強制した体制、それを運用する役人のご都合主義に向けられる。しかし、その矛盾が生んだ様々な悲喜劇をユーモラスに語るところに、酸いも甘いも噛み分けた巨匠の人柄がにじみ出ている。それぞれ一章が設けられたショスタコーヴィチ、オイストラフ、ロストロポーヴィチらに対する率直な〈証言〉も実に興味深く、後世への貴重な資料となることだろう。