©Hans Morren

バロック音楽界の至宝、コープマンを聴く歓び

 今年10月で80歳を迎える巨匠トン・コープマンが待望の再来日を果たす。オルガニスト、チェンバロ奏者として、また指揮者として自ら設立したアムステルダム・バロック管弦楽団・合唱団をはじめ世界の一流オーケストラとも共演。D. ブクステフーデ、J. S. バッハを中心としたバロック音楽研究における世界的権威でもあるが、その人柄は演奏会を聴いた人なら皆感じるチャーミングで人間的な温かみにあふれている。日本にも定期的に来日し、全国各地でオルガン、チェンバロのリサイタルを行い多くのファンがその演奏を心待ちにしている。今回はすみだトリフォニーホールで前半をチェンバロ、後半をオルガン演奏というなんとも贅沢なプログラムでスタート。華やかなバッハのトッカータから始まり、ルイ・クープランやデュフリなど珠玉の小品、そして最新録音(2022年)であるヘンデル“チェンバロのための組曲集”(キング・インターナショナル)から“調子のよい鍛冶屋”で知られる変奏曲を含む組曲第5番など、繊細かつ力強いチェンバロの音色を楽しんだ後は、トリフォニーホールが誇る18世紀ドイツ・バロック時代のオルガンの特徴を基本とした3段鍵盤、66ストップの大オルガンの演奏である。戦いを意味する“バッターリア”(作者不詳)の強く華やかな作品からスペインのP. ブルーナ“聖母のための連祷によるティエント”、そしてD.ブクステフーデ、J. S. バッハへと続くコープマン・ワールドである。続く芦屋ルナ・ホール、高崎芸術劇場では、スヴェーリンク、W.バード、パーセルから、最後、ヘンデルの組曲第5番まで、これもまたコープマン自身が選び抜いたチェンバロの珠玉の作品が並ぶ。エリザベト音楽大学セシリアホール(広島)は、ツアー唯一のパイプオルガンの音色を一晩楽しめるコンサート。D. ブクステフーデ“わが愛する神に”“パッサカリア”、J. S. バッハ“おお人よ、汝の大いなる罪を嘆け”“前奏曲とフーガ ハ短調 BWV 549”“前奏曲とフーガ ハ短調 BWV 546”とこれぞコープマンの真骨頂という名曲が並ぶ。学術的に裏打ちされた解釈を持ちつつ、楽器に向かうその姿は作曲家への敬愛に溢れ、ひとつひとつの作品に命が吹き込まれていく。これまで何度も訪れている日本はコープマンにとっても特別な場所である。

音楽を愛する皆様、80歳を迎えるこの記念すべき年に再び日本を訪れることができて嬉しいです。日本の聴衆の皆様がいつも音楽に寄り添い、心から私の演奏を楽しんでくださることは私にとっても大きな喜びです。皆様のバロック音楽への、特にバッハへの愛を深く感じます。今年はまた新たにCDリリースしたヘンデルの作品もプログラムに重要な位置をしめています。
皆様にコンサートをお楽しみいただけるよう願っています。
トン・コープマン

 


LIVE INFORMATION
トン・コープマン チェンバロ・リサイタル

2024年11月13日(水)兵庫・ルネサンスクラシックス 芦屋ルナ・ホール
開場/開演:18:30/19:00
出演:トン・コープマン(チェンバロ)

■演奏曲
J. P. スヴェーリンク(1562-1621):大公の舞踏会 ト長調 SwWV 319
涙のパヴァーヌ イ短調 SwWV 328
W. バード(1547?-1623):ファンタジア イ短調
A. ヴァレンテ(1520-1581):ナポリ風ガリアルダ ト長調
P. ブルーナ(1611-1679):聖母のための連祷によるティエント ト短調
J.S. バッハ(1685-1750):トッカータ ト長調 BWV 916
H. パーセル(1659-1695):グラウンド ハ短調 ZD 221
G.F. ヘンデル(1685-1759):組曲第3番(クラヴサン組曲第1巻)~プレスト HWV 428
L. クープラン(1668-1733):シャコンヌ ハ長調
J. S. バッハ:協奏曲ニ短調 BWV 974(原曲A. マルチェッロ:オーボエ協奏曲)
J. デュフリ(1715-1789):クラヴサン曲集第3巻より フォルクレ ヘ短調
A. フォルクレ(1671-1745):クラヴサン組曲第2番より ラ・ルクレール
G. H. ヘンデル:組曲第5番(クラヴサン組曲第1巻)ホ長調 HWV 430
※曲目は変更となる場合がございます。ご了承願います。

公演詳細:https://classics-festival.com/rc/performance/ton-koopman-2024/