渋谷すばるの『Lov U』のリリースを記念して、タワーレコードではフリーマガジン「TOWER PLUS+ 渋谷すばる 特別号」を発行! ここでは中面に掲載されたレビューを掲載いたします。「TOWER PLUS+」はタワーレコード全店にて配布中です! *TOWER PLUS+編集部

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渋谷すばる 『Lov U』 トイズファクトリー(2024)

 

渋谷すばるがトイズファクトリーと契約してアルバム『Lov U』をリリース。〈個〉から〈共作〉へつながったことやグループ活動時代以来の再会など、大きな変化や挑戦によって生まれた本作。初回生産限定盤に付属するBlu-rayのインタビューを担当した澄川龍一にアルバムをレビューしてもらった。


 

外部クリエイターとの〈会話〉が生んだアルバム

これまでの渋谷すばるは、2019年のファーストアルバム『二歳』以降、一聴して彼だとわかる強烈な個性が前面に出た音楽を鳴らしてきた。しかしこのたび、トイズファクトリーからリリースされるアルバム『Lov U』は、そうした〈個〉で形成されたこれまでとは明らかに異なるアプローチで生まれた作品となっている。

あえてジャンル的に括れば、ロックンロールやパンク、ガレージなどを下敷きに、そのときどきの自分を音楽に投影してぶつける、いわゆる〈渋谷すばる〉という記名性の強い楽曲が強烈な存在感を放っていた。それが多くの人たちを魅了してきた。対して『Lov U』は、外部のクリエイターを積極的に採用した全編が〈ラブソング〉という、これまでとは異なる輝きを放つ作品となっている。藤井 風らを手がけたことでも知られる丸井元子によるアートワークにも見られる、はにかんだような笑顔もまた、これまでのむき出しの彼とは違った印象を受ける。

そうした丸井とのタッグで生まれたアートワーク同様に『Lov U』の音楽も多くの外部クリエイターとともに作られていった。これまでは自身の作詞・作曲・編曲で音楽を生み出してきたのに対し、本作では1曲を除いて渋谷のクレジットはない。しかし、楽曲制作に入る前段階で多くのクリエイターたちと膨大な〈会話〉をすることで、渋谷の想いを汲み取った音楽たちがしっかりと鳴らされている。なかでも、ほとんどの作詞を担当した、カナダ在住の作詞・作曲家miccaとは、渋谷は自身の生い立ちから現在まで、それこそ「自分の深いところ、あんまり人に言いたくない、踏み込んでほしくない部分」までを話すことで共鳴し合って歌詞たちが生まれていった。渋谷の楽曲群では珍しい、〈会話〉を成すことで作り上げられたのがこの『Lov U』なのだ。

 

新たな魅力と表情に溢れたラブソングたち

そんな『Lov U』は、先行配信曲“君らしくね”から始まる。業界屈指のマルチプレイヤーでありシンガーソングライターである、THE CHARM PARKの空間的なギターが印象的なロックサウンドの奥から聴こえてくるのは、紛れもない〈渋谷すばる〉の歌声だ。力強くも人懐っこい、そして優しく耳と心に触れる歌声は、新たな出会いと会話を経てより表情豊かになって歌われる。

続く“ライム”は、爽やかで瑞々しいロックサウンドに時折ファルセットを聴かせるなど、サウンドとボーカル双方で新鮮な心地よさをもたらしてくれている。そして表題曲“Lov U”でも、4つ打ちのリズムにストリングスを交えた都会的なサウンドに、スウィートなメロディとボーカルを聴くことが出来る。これも新しい魅力に溢れた楽曲だ。『Lov U』で語られるラブソングたちは、まるで愛を深めていく恋人たちのように次々と新たな表情を見せてくれるのだ。