渋谷すばるのセカンド・アルバム『NEED』のリリースを記念して、タワーレコードではフリーマガジン〈別冊TOWER PLUS+〉を発行! ここではその中面に掲載されたコラムを掲載いたします。別冊TOWER PLUS+は、タワーレコード全店にて11月11日(水)より配布中です!
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渋谷すばる 『NEED』 WARNER MUSIC JAPAN(2020)

 

渋谷すばるからセカンド・フル・アルバム『NEED』が届けられた。前作『二歳』(2019年10月)以来、約1年ぶりとなる本作。そこには『NEED』というタイトル通り、〈自分にはどうしても歌が必要だ〉という強い思いが克明に刻み込まれている。

まずはこれまでのキャリアを簡単に振り返っておきたい。関ジャニ∞での活動を終え、国内外を旅行するなど、束の間の休息を取った渋谷は、2019年2月にオフィシャルHP「渋谷すばるです。」を立ち上げ、同年10月にリリースされたファースト・アルバム『二歳』によって、アーティストとしてのスタイル、音楽的な方向性をはっきりと示してみせた。軸になっているのはオーセンティックなロックンロールとブルース。自らの感情、人生観を直接的に反映した歌詞、驚くほどに率直なヴォーカリゼーションを含め、その音楽性はコアなファン以外のリスナーにも強いインパクトを与えた。

さらに2020年1月からは千葉・幕張メッセ公演を含む初の全国ツアーを開催。持ち前のスター性、削ぎ落したバンド・サウンド、どこまでも真っ直ぐな歌声によって、全国のオーディエンスをガッチリと惹きつけてみせた。

極めて順調なスタートを切った渋谷だが、世界中のすべてのアーティストと同じく、新型コロナウィルスの感染拡大により活動は停滞。アジア・ツアーとファイナル大阪公演が中止になり、STAY HOMEを余儀なくされた。しかし渋谷は、世界が一変してしまった時期にも曲を書き続けていたはず。そう、ニューアルバム『NEED』は、〈この時期だからこそ生まれた楽曲〉がたっぷりと込められているのだ。

本作について渋谷は、「こんな今だからこそ、ただただ目の前にある当たり前の日常を大切にしていきたい。色々と状況が変わっていく中で、今の自分の日常から生まれた楽曲を集めたアルバム。聞いてくれた人の日常にも寄り添えたら嬉しいです」とコメント。この言葉からも、本作には〈2020年の渋谷すばる〉が色濃く反映されていることがわかってもらえるはずだ。

レコーディング・メンバーは前作と同じく、塚本史朗(ギター/月に吠える。)、山本健太(キーボード)、なかむらしょーこ(ベース)、Shiho(ドラムス)。凄腕のミュージシャンでもあり、気の置けない仲間であるバンド・メンバーとともに奏でられる生々しいサウンドもまた、このアルバムの大きな魅力だ。

 

では、『NEED』の収録曲をいくつか紹介したい。アルバムの始まりを告げるのは、“Sing -a cappella-”。冒頭の〈歌が必要だ 俺にはどうしても〉という歌詞は、本作を象徴する言葉であると同時に、渋谷すばるというアーティストの根本的な姿勢を示している。どんな状況になろうと、俺には歌が必要だし、それを世界に向けて放ち続けるんだ――アカペラによるこの曲を聴けば、現在の彼のモチヴェーションがはっきりと感じ取れるだろう。

3曲目の“BUTT”は、彼の音楽のど真ん中にあるロックンロール・ナンバー。鋭利なギター・リフ、心地よいグルーヴを生み出すピアノ、渋谷が奏でるいぶし銀のブルースハープがぶつかり合うサウンド、そして、感情をむき出しにして楽しそうに叫び、歌うヴォーカルは、まさに彼の真骨頂だ。

先行配信された“人”は、〈どんなことがあっても、人を傷つけてはならない〉という真摯な思いが響くナンバー。本質的なメッセージをシンプルな言葉で紡ぐセンスも、渋谷の大きな武器だと思う。ピアノと歌を中心とした素朴なアレンジも、歌詞に込められたピュアな感情を際立たせている。

そして、個人的にもっとも心に残ったのは、10曲目の“素晴らしい世界に”。未来の展望がまったく見えず、重苦しいムードが蔓延している現在。それでもなお、人と人が心を繋ぎ、希望と優しさに溢れた世界を諦めない――。コロナ禍における希望の在り方を叙情豊かに描き出した名曲だと思う。

アルバムの最後を飾るのは、“Sing”。1曲目と同じく〈この世界には歌が必要だ〉という思いを込めた楽曲だ。心になかにあるものを歌という形にすることで、必ず心と心で繋がることができる。それこそが、渋谷が歌にこだわり続ける最大の理由なのだろう。

歌という表現が持つ力強さ、奥深さをダイレクトに感じられるアルバム『NEED』。ここに込められた言葉とメロディは、先が見えない世界で生きる人々に様々な気づきと大きな勇気を与えてくれるはずだ。渋谷すばるの本領が発揮されるのはやはりライブ。『NEED』の楽曲が大勢のオーディエンスの前で響く瞬間を心待ちにしながら、アルバムをじっくり堪能したいと思う。