©Ivan Bessedin

ソ連時代からの伝説的なロック・ミュージシャン、ボリス・グレベンシコフが来日!

 ソ連時代から第一線で活動を続けるボリス・グレベンシコフと彼が率いる〈BG+〉が11月に来日する。僕は1980年代後半に当時のソ連のロックに興味を持った。1960年代や1970年代のアメリカのロックに影響を受けて育った僕は、ベトナム戦争中にジェファーソン・エアプレインらが政府に抗議する曲を作り、若者やヒッピーに新しい生き方を訴えていたロックの精神を、1980年代のソ連を代表するロックバンドである、ボリス・グレベンシコフ率いるアクワリウムやヴィクトル・ツォイのキノーの音楽からも感じ取ったからだ。

 ルー・リードやデヴィッド・ボウイ、パンクなど西側の音楽の影響を受けつつ、詩人としても知られるグレベンシコフらはロシア語で独自の音楽を生み出した。ロックは〈西洋の退廃的な文化〉として禁止されていた時代、彼らの音楽はカセットテープにダビングされソ連中に広まり、アンダーグラウンドなムーブメントとなっていった。

 商業化が進んだ欧米のロックに対し、ソ連のロックは商業主義とは無縁のエネルギーにあふれていた。1960年代のアメリカのロックがそうであったように、1980年代のソ連で彼らは実験的なおもしろい音楽を作り出し、ブライアン・イーノら西側の音楽家たちもその活動を高く評価していた。それはまさに変化の時代に生まれた詩と音楽であり、僕も彼らから強いインスピレーションを受けた。

 ソ連崩壊後も〈アクワリウム〉はロシアの音楽シーンを牽引してきたが、ロシア軍によるウクライナ侵攻に反対したグレベンシコフはロシア国内での活動を停止。現在はロンドンを拠点にメンバー7人による新バンド〈BG+〉として活動している。メンバーはキノーのベーシストでもあるアレクサンドル・チトフや、アイルランドのティン・ホイッスル奏者のブライアン・フィネガン、ヴァン・モリソンやシニード・オコナーのドラマー、リアム・ブラッドリー、バロック・ヴァイオリン奏者、サンクトペテルブルグ音楽院を卒業したキーボーディストなど錚々たる顔ぶれだ。

 グレベンシコフはクラシックやケルト、インド、アフリカ、中央アジアなどの音楽や民族楽器などを取り入れて独自の音楽をつくってきたことでも知られている。9月に出た新アルバムではデヴィッド・ボウイのプロデューサー、トニー・ヴィスコンティもアレンジで参加している。今回の日本公演でもその幅広い音楽性で楽しませてくれることだろう。

 


LIVE INFORMATION
アーティストの健康上の理由により、コンサートは延期、中止となりました。詳細はチケット販売サイトをご覧ください。
https://www.gettiis.jp/event/detail/101305/H31208