〈SUMMER SONIC 2025〉で多くの日本のファンを沸かせたアリシア・キーズが、東京国際フォーラム ホールAにて単独公演を開催した。サマソニ直後の公演であったがチケットは瞬く間にソールドアウトとなった。そんなプレミアムな一夜の模様を綴ったオフィシャルレポートが到着した。 *Mikiki編集部
息をつく暇もない速さで構築されていくアリシアの世界
〈SUMMER SONIC 2025〉のヘッドライナーを大阪・東京と二日連続で務めた余韻も冷めやらず、日本では約12年ぶりとなるアリシア・キーズの単独公演が開催された。開演前のステージ上には漆黒のグランドピアノが置かれ、後ろから照らされるライトでさらに神秘的に見える。バンドメンバーがブルージーに奏でるイントロに続き、ライブのオープンを飾るのは言わずと知れた代表曲“Fallin’”だ。デビュー作『Songs In A Minor』がリリースされてから24年の歳月が経つ。客席にはデビュー当時からのファンも多数いるわけで、高く歌声を響かせて“Fallin’”を披露するアリシアに、それぞれのライフストーリーが重ねられていくような気さえした。
続くのはアップテンポな“New Day”。ピアノを離れてステージ前方へ移動し、どんどん客席を盛り上げる。感嘆するのは、次の楽曲に進行する際のトランジションだ。どの瞬間にもライブならではのアレンジが施され、まさに息をつく暇もないほどのスピード感でアリシア・ワールドが構築されていく。

例えばレゲエ調の“Limitedless”は途中からジャジーなアレンジが加わり、そのままシームレスに”You Don’t Know My Name”へ。原曲よりもグルーヴ感が増し、アリシアのボーカルが隅々まで行き渡る。ピアノとステージを行き来しながら、常にエネルギッシュに歌い続けるアリシア。タイトなトップスに大きめなシルエットのカーゴパンツ、足元はティンバーランドにも見えるブーツというラフなアウトフィット。そして、あのビッグスマイル。どこまでもリラックスし等身大に見えるが、もちろん、パフォーマンスのクオリティは最上級。一瞬たりとも隙は見せない。これこそが、頂点に立つアーティストの(かつ、べテランの域に達する)プロフェッショナリズムか、と舌を巻いた。

バンドとの掛け合いもスリリングな”Karma”や「いつまでも私のお気に入りの曲」と前置きしながら印象的なピアノのフレーズを弾き始める”Diary”などを披露していく。プリンスのカバーでもある”How Come You Don’t Call Me”では「みんなのヘルプが必要なの!」と呼びかけ、観客もフィンガースナップで参加。スナップの音とピアノの音色、そしてアリシアの歌声のみのシンプルなスタイルで曲が進行していくが、逆にこの演出だからこそ、ロウキーでミニマルなファンクネスが炸裂したように思えた。

アリシアもシャウトを交えながら歌い進め、会場の雰囲気はますます濃密に、そしてスケール感を増したものに。”Underdog”では、コーラスのライ&ホイットニーとともにステップを踏む姿がキュート! この曲は、社会的マイノリティや生きづらさを抱える人々に向けたもの。歌いながら「あなたに向けて歌っているの!(I’m talking to you!)」と飛びかける姿に目が潤んだ。