2024年末の特別企画として、タワーレコードのスタッフが選ぶ2024年マイベスト洋楽アルバムをお送りします。各店舗や本社のスタッフが、今年の洋楽アルバムの個人的なお気に入りを選んでコメントしました。同趣旨の〈2024年マイベスト邦楽アルバム〉〈2024年マイベストレコード〉も、ぜひあわせてチェックしてください。 *Mikiki編集部

★2024年末特別企画の記事一覧はこちら


 

任(渋谷店)

HYUKOH, SUNSET ROLLERCOASTER 『AAA』 DooRooDooRoo Artist Company/Sunset Music Productions/YG Plus(2024)

アジアンバンド好きなら、この2大バンドのコラボアルバム『AAA』を絶対見逃してはいけません! 韓国のHYUKOHと台湾のSunset Rollercoasterは長年の親交があり、コロナ禍終焉で再会した際に、コラボの願いを再確認し、ついに2024年、この夢のコラボレーションを実現させました。

『AAA』は〈Asia〉と〈Access All Areas〉の意味を持ち、さらに文化の境界を超えるという想いも込められています。革新的でありながら懐かしさも感じさせ、遊び心溢れる実験精神で作り込んだアルバムです。

HYUKOHの特徴的な声色とSunset RollercoasterのAORサウンドが絶妙に融合し、聴いていて心地よい。その中で“Aaaannnnteeeeennnaaaaaa”の響きの良さや“2F annual driver”に収録された録音中の会話をそのまま取り入れることで、音楽を楽しんで作っている様子が伝わってきます。

 

添田 岳(札幌パルコ店)

WISP 『Pandora』 Music Soup/Interscope(2024)

マイブラに出会った時の衝撃が蘇った! USポストシューゲイズの超新星ウィスプ。Instagramのリールでライブ映像が流れて来てヒットミーしました。儚げで甘美なウィスパーボイスとヘビーなドラムにシューゲイザーの代名詞的ともいえる轟音なディストーションサウンドのアンサンブルは水中へ沈んでいくような没入感。デフトーンズのフォロワーっぽさもあって最高の出会いでした。

 

NY(ららぽーとTOKYO-BAY店)

ARIANA GRANDE 『eternal sunshine』 Republic/ユニバーサル(2024)

とても楽しみに待ってました!!

世界の歌姫アリアナ様、約3年ぶりの待望のアルバム。これまでにさまざまな恋愛曲、女性像を描いたものなど届けてきた中で、3年ぶりのアルバムにはより大人の女性ならではの美しさを感じました。

このアルバムのリード曲“yes, and?”では、周りが何と言おうと、気にせず自分らしく進もうとする強い女性像が描かれていますが、私の推し曲“don’t wanna break up again”のような別れたくないけど別れなくてはいけない、もどかしい気持ちと泣きながら語りかけているようにも聞こえる歌声の曲もあったりと、ドキドキさせられる1枚であり、落ち着いたR&Bサウンド多めアルバム。

本当にアリアナ様、最高です。来日公演熱望……。

 

三橋俊弘(東浦店)

JOSH JOHNSON 『Unusual Object』 Northern Spy/rings(2024)

自分がまだ知らない音楽が聴きたくて名古屋、納屋橋にあるBar Sciviasに通っていましたが、ある時タワレコフリークでもあるありがたい店主の方から「またタワーに行って買ってきたよ」と聴かせてもらったジャズなのに4つ打ちな曲“Marvis”。

ジョシュ・ジョンソンというプレイヤー、プロデューサー(ミシェル・ンデゲオチェロ他)のセカンド作品。なんでこんなに惹かれるのかと思ったら、師事していたのがトータスのジェフ・パーカーなんですね……。

1stでの編成とはうってかわって一人で?作り上げた11曲。巧く仕上げようとしてない一筆書きの良さと一人でとことん向き合った鋭さが同居していて、繰り返し聴いてしまう魅力に溢れてます。何度も耳をリセットして頂きました。

 

松本健太(渋谷店)

SABRINA CARPENTER 『Short n’ Sweet』 Island/ユニバーサル(2024)

来年発表されるグラミー賞4部門でノミネートされたサブリナ・カーペンター、6作目のアルバム。

まず“Taste”の冒頭でサブリナの身長が152cmだったことを知りました……(笑)! 

カントリーとポップスを上手く融合させたような“Please Please Please”では、心地よいグルーヴィーなサウンドとは裏腹に、歌詞の内容的には〈女グゼの悪い恋人〉に対する疑念を歌った皮肉にも思えるような楽曲を、こんなにキャッチーなメロディーに乗せて歌えるサブリナの魅力に惹かれ、どっぷりとハマってしまいました……!!!!

ほかにも、クセになるようなサビのメロディーラインに加えて、〈エスプレッソ〉とあの有名な〈ニンテンドー〉で韻を踏むという、日本人心をもくすぐるユーモアが光る“Espresso”や、中でも私がアルバムで特にお気に入りなのは、カントリー調の“Slim Pickins”から、アップテンポの“Juno”の2曲の並び。田舎町を抜け出して、大海原に来たような開放感のイメージのあるこの2曲が、夏好きの私にとっていつでも夏に思いを馳せることのできる、最高の2曲!!

ラストを飾る“Don’t Smile”では、R&Bテイストがありつつも、しっとりとアンニュイな雰囲気でアルバムを締めくくる大人のセクシーさも魅力的です!!

あとはこのジャケット!!!! あまりにも好きすぎて、CDとLP両方買ってしまいました……!! 見開いた中面のLPジャケも本当に素敵です!!! 2024年のマスターピースな一枚、間違いなしです!!!

私の推薦曲は、①②③⑦⑨⑩⑫です!!!

 

小畑雄巨(神戸店)

AROOJ AFTAB 『Night Reign』 Verve/ユニバーサル(2024)

この2024年は良し悪しにかかわらず、何故だかほとんど〈歌もの〉が耳というか心に馴染まなかった1年だった中、唯一このアルージ・アフタブのメジャー1stだけは〈歌声〉に惹かれ年間通して聴き続けていた。その歌声からは彼女のルーツでもあるパキスタンの伝統が色濃く感じられるが、耳を通り過ぎ、自分の中の何かを浄化するようなメディテーショナルな感触や、ECM的ジャズ、ニューエイジ要素もあるサウンドはシーラ・チャンドラを想わせたりもする。

そして、夜闇が浮かび上がらせる恋や孤独といった感情を内省的に綴ったアルージの歌とともに、コーシャス・クレイ、チョコレート・ジーニアス、ジョエル・ロス、ムーア・マザー、ヴィジェイ・アイヤーなどなど、ジャズやR&B、エレクトロと各々軸足を置くシーンはありつつも、その垣根を超え個性的な存在感を示す精鋭たちが、その世界を丁寧に繊細に音像化させたサウンドもひじょうに素晴らしい。

 

伊藤博明(明石店)

COLOURING 『Love To You, Mate』 Bella Union/BIG NOTHING(2024)

過去にはThe 1975のツアーサポートも行うなど、イギリスのミュージックシーンを賑わせた気鋭のソングライター/プロデューサー、ジャック・ケンワーシーによるプロジェクト、カラーリングのセカンドアルバム。今作は元コクトー・ツインズのサイモン・レイモンドとロビン・ガスリーによって設立されたベラ・ユニオンよりリリース。

ジェイムス・ブレイクを彷彿とするエレクトロなトラックに、ベッドルームポップ的なアプローチを取り入れたチルなサウンドと言えば、単なる昨今のトレンドサウンドのアルバムという印象に終わるかもしれないが、このアルバムはどこか一味違う。“For You”のダンサブルなハイハットワークと特徴的な歌メロの譜割り、“Coda”のピアノとファルセットの静謐な響き、“For Life”で兄弟に呼びかける詞に呼応して、ストリングスを交え徐々に温度を上げていくサウンド。全編を通して言いようのない切実なエモーションがある。

それは前作『Wake』の完成後に、彼の義理の兄弟が病に侵されていたことが発覚し、その事態に直面しながらこのアルバムが制作されたことによるある種の逼迫、切実さがそうさせるのか(実際収録されている曲の詞や、アルバムのタイトルからもそう感じずにはいられない部分がある)、はたまた内省的で飾らない詞がそうさせるのか、柔らかなピアノやシンセサイザーを基調としたウォームなサウンドがそうさせるのか、ジャック・ケンワーシーの少し掠れた、優しい歌声がそうさせるのか。ともかく聴いていて心の奥にじんわりと暖かい火が灯るような、そんな人間味に溢れた一枚である。

 

鈴木善夫(セブンパークアリオ柏店)

電子音楽界の鬼才ホアコS.のいくつもある別名義のひとつ、ロイディスで発表された本作はダビーでユーフォリックなシンセ、グルーヴィーなベース&イーブンキック、サウンドの鳴り、曲構成と、その全てが圧倒的に洗練されたフロアライクなミニマルダンスミュージックの大傑作!! やはりテクノ最高!!と思わされた1枚でした。

 

寺本将巳(神戸店)

ADRIANNE LENKER 『Bright Future』 4AD/BEAT(2024)

ロック、ソウル、ヒップホップにK-POP、ほんと色々と良い作品に出会うことが出来て毎年感謝しております。そんな中、恒例の1年振り返りで洋楽ベストを考えてみました。2024年は洋楽、邦楽ともにシンガーソングライターの作品を繰り返し聴いたような気がします。そして洋楽はこちらをセレクトさせて頂きます。USインディーシーンを牽引するビッグ・シーフのエイドリアン・レンカーのソロアルバム。アコースティックギターを基調にフォーク~フリーフォーク~サイケまで、オルタナティブなサウンドは森の中に佇むアナログスタジオ、ダブル・インフィニティにて録音。穏やかに流れる歌声に対比的なエッジの効いた緊張感も感じられ、エモーショナルに感情を揺さぶられる作品です。

 

小峰隆由貴(オンライン事業統括部)

GEORDIE GREEP 『The New Sound』 Rough Trade/BEAT(2024)

2024年も残り少なくなったなと感じる10月に突如ドロップされたこの作品。私は何の予備知識もなく、前身のブラック・ミディすら知らない状態でこのアルバムを聴き、結局2か月足らずで2024年度のマイベストになりました。まず耳を奪われたのがタイトなリズム隊とシンクロするギターリフ。軽くキング・クリムゾンを彷彿させつつ、急にサルサ、ワルツと、とにかく緩急の振り幅が凄い。爆音の中に、数多くのロマンティシズムを組み込み、聴き終えた後の感想が〈スゲー〉とか〈格好いい〉とかじゃなくて慈悲とか救いのような感覚。作品のテーマは絶望。そこに垣間見える歪んだ愛であったり、優しさがメロディに昇華されています。そして、この作品、聴けば聴くほど耳に残るフレーズが増えていくので、飽きない。このサブスク時代にあって、ここまで毎回アルバムを通して聴いた作品も珍しい。

 

直嶋紘子(拡販部)

RAT BOY 『SUBURBIA CALLING』 Hellcat(2024)

これまでのジョーダン・カーディのソロプロジェクトという位置付けではなく、バンドとして初めてリリースしたラット・ボーイの3rdアルバム。

YouTubeで色々聴き漁っていた時にたまたま出会ったのがたしか2015年。イギリスのロックに影響を受けた子たちだとばかり思っていたのに、いつからかランシドのティム・アームストロング化が進み、ヘルキャット・レコードからのリリースももはや2枚目。こんなにパンクに傾倒するなんて当時は考えられなかったけど、楽曲を聴くと妙に納得というか見事にハマっている。

彼らの故郷であるエセックスをテーマにした本作は、パンク〜スカ〜2トーンにヒップホップやブリットポップのエッセンスが散りばめられた名曲揃い。本作からめでたく?正式なバンドメンバーに昇格した3人のデモ音源をスティーヴン・ストリート(ブラーやザ・スミスとの仕事でお馴染み)が編集したという制作方法も面白く、ライブ感のあるエネルギッシュなサウンドも最高。

あれ、今気がついたけどタイトルの『SUBURBIA CALLING』ってもしかしてザ・クラッシュの『London Calling』のオマージュ……?

 

早瀬 翔(仙台パルコ店)

ENGLISH TEACHER 『This Could Be Texas』 Island(2024)

2018年からシェイムやゴート・ガールなどを筆頭に、UKのバンドがせめぎ合っていた時代。その時代から今を考えると、ものすごくオルタナティブで個性があり、エキサイティングなものが増えた印象があります。飽和状態になっていた空気感に一石を投じたブラック・ミディや、チェンバーポップに実験的な音像を持ち込んだブラック・カントリー・ニュー・ロードなど、コミュニティを含め盛り上がりが最高潮だと思っておりましたが、2024年に入ってからもそれは更新され続けております。

英リーズ出身の4人組バンド、イングリッシュ・ティーチャーのデビューアルバム『This Could Be Texas』。間違いなく今年の音楽シーンを語る上で必要なピースです。すでにライブでお馴染みの4曲目“I’m Not Crying, You’re Crying”やインディー時代からブラッシュアップされたキラーチューンの8曲目“R&B”、うねるベースラインとグルーヴが魅力の9曲目“Nearly Daffodils”など、ポップにもロックにも寄り添う内容の濃い全13曲。A面とB面に分けアナログ盤を意識させたアルバム構成。さらに英国で最も権威のある音楽賞のひとつマーキュリー・プライズを受賞し、商業的にも音楽的にも成功を収めた傑作です。

来年1月には初の来日公演もあり! 僕は行きます。

 

巻本拓也(オンラインMD企画・運営部)

LAU RO 『Cabana』 Far Out/unimusic(2024)

ここ数年、バーラ・デゼージョやアナ・フランゴ・エレトリコ周辺といった、現行ブラジル音楽の煌びやかな才能に魅了されてきました(ドラ・モレレンバウムの新作も最高でした!)が、今年最も愛聴したのが、イギリスのバンド、ワックス・マシーンのリーダー=ラウ・ローが自身のルーツであるブラジルに向き合った本作。

このブラジル出身UK在住という点(個性)が音にもよく表れており、靄掛かったアンビエントフォークに一気に呑み込まれる冒頭①から、ブラジル特有の祝祭感や眩しい太陽は昇らず、一向に曇り空で内省的。カエターノ・ヴェローゾのトロピカリア諸作や、アルトゥール・ヴェロカイのブラジリアンサイケ的な要素もありつつ、やたらと湿気の多いボッサにアシッドの効いた濃霧なフォーク、他のブラジル作品とは一線を画す終始低体温なMPBサウンドが実にユニークでした!

シネマティックなインスト⑤、サスティーンの効いたギターのレイヤーが心地よい⑥、ヨ・ラ・テンゴの“Green Arrow”級の極上ナンバー⑧、ニック・ドレイク好きにも聴いてほしい至福のラスト⑩等、生楽器と音響的なエレクトロクスのアンサンブルも絶妙で、深いリバーブによる歌声がジャケット通りのおぼろげな世界感を見事に表現。音の幅と懐が深くも、自分の好きな要素しかない作品で、気づけば何周もリピートしてしまいました。

 

小田淳治(Mikiki編集部)

FLOATING POINTS 『Cascade』 Pluto/Ninja Tune/BEAT(2024)

UKのバンドシーンが何度目かの賑わいを見せ、北米ではラップミュージックがチャートを独占する光景が減少。アフリカや南米ではその国、その地域のトラディショナルな音楽がこれまで以上に世界へと発信され、日本を含むアジアではコロナ禍を経てアーティストによる国から国への往来が増えたことで、世代やジャンル、キャリアに関係なく活躍できる場が広がったように思います。

そんなざっくりと2024年を見わたしたあとで、自分のマイベストを考えてみました。フジロックでの来日も話題だったベス・ギボンズの『Lives Outgrown』はよかった。ニルファー・ヤンヤの『My Method Actor』も愛聴していたし、ザ・キュアーが16年ぶりに放った新作『Songs Of A Lost World』は今も繰り返し聴いている。

そうして自分の2024年をスクロールしていくなかで、ふと指を止めたのがフローティング・ポインツの『Cascade』。今年はクラブ/テクノミュージックを特によく耳にしたような気がします。ビートや小節における〈反復の快楽〉とでも言いましょうか、歌やメロディーに縛られない表現に改めて価値を感じました。

来年2月には東京と大阪で単独公演も開催されるので(東京公演はすでに完売!)、フジロックで見逃した方もぜひ。

 

天野龍太郎(Mikiki編集部)

REMA 『HEIS』 Mavin/Jonzing/Interscope(2024)

先日、〈洋楽〉という括りについて、英米以外の特定の地域や民族音楽などを〈マニアック〉と書き捨てた投稿をXで見かけて、かなりモヤモヤしました。自分は、J-POPと英米のポップやロックを聴くことに始まり、そこから色々な時代と地域の音楽を無節操に聴いていったことで、リスナーとしての無意識の思い込みのような枷を少しずつ外していったところがあります。耳が啓かれたというか。

というわけで、私なりに2024年の〈洋楽〉のアルバムを選んでみます。メキシコのコリードやブラジルのバイレファンキ、アフリカのポップミュージックに引き続き興味があった年で、たとえばコリードではシャヴィの『NEXT』とペソ・プルーマの『ÉXODO』、バイレファンキではアニッタの『Funk Generation』やコンピレーションアルバム『funk.BR - São Paulo』、そしてウクライナの多様な音楽を集めた『Even The Forest Hums: Ukrainian Sonic Archives 1971-1996』などがフェイバリットでした。

ナイジェリアのレマは、セカンドアルバム『HEIS』で典型的なアフロビーツのスタイルから抜け出て、アマピアノやゴム、シンゲリといった近年アフリカ各地で花開いたポップミュージックを一つの器の中に投げこみ、渾然一体となったダンスポップを生みだしました。混沌とした印象もありますが、彼が言うところの〈アフロレイヴ〉がダークかつ狂騒的な形で鳴らされている傑作です。これは、文字どおりの意味で〈マニアック(狂気的)〉な音楽かもしれませんね。