ポーティスヘッドのベス・ギボンズが初のソロ・アルバムを完成させた。ベスとジェイムズ・フォードの共同プロデュース、トーク・トークのリー・ハリスが制作で参加という体制で作られた本作は、遊び心と探求心で満ちあふれる作品だ。パエリア皿や牛革の水筒などを楽器として使い、聴き馴染みがない音色を鳴らす。タイムレスな滋味を纏うベスの歌声も印象的だ。厭世的情動の海に、前へ進もうとする一筋の光が差したような言葉を紡ぐその歌声は、これまでの人生で味わってきた苦さと甘みを漂わせる。そんな本作を聴くと、ベスの頭の中を覗き見するような感覚に襲われる。