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ボブ・ジェームスの名曲にちなむ強力なメンバーのピアノトリオ

――Nautilusを結成するに至ったいきさつにも、クラブシーンの存在が大きく関わっている?

「そうかもしれないですね。2014年でしたが、Cradle Orchestraという音楽ユニットをやっていた瀬戸智樹くんから、渋谷のクラブBALLの空いてる日程でイベントをやらないかと、声をかけてもらったんです。当時は自分のバンドがなかったので、仲のいいミュージシャンを誘って、〈Toshiyuki Sasaki Session〉みたいな感じでやってみたのがきっかけでした。その時に呼んだのが、今もNautilusを一緒にやっているベースの梅沢茂樹さんと、TRI4THなどでも活躍しているピアニストの竹内大輔くん(2020年脱退)。僕がやりたかったカバー曲を中心にやりつつ、自分名義のセッションも久しぶりだったので、それに合わせてオリジナル曲も作って。

そうして初ライブを行ったんですが、感触もとてもよかったし、自分としてもやっぱりこういうのをやりたかった!と思って、これはバンドにしようと。この3人で初めて音を出した曲が、ボブ・ジェームスの“Nautilus”だったんです。自分の好きな曲だし、潜水艦の名前にもなっていて深海のミステリアスなイメージも連想されて、バンド名にしたら面白いかなと。そこから10年続いた感じです」

――ピアノトリオという編成を選んだ理由はあるんですか?

「それはやっぱり僕自身が、ピアノトリオという形式がすごく好きなんですよね。アジムスなんかもそうですけど、ピアノ、ベース、ドラムっていうバランスがよくて。初めは実験的にやってみた感じだったけど、実際に音を出してみたら自分の中でしっくりきたというか。ギターやホーンセクションを入れたり、ミュージシャンが多ければ、結構なんでも出来ちゃうし、音の厚みもいくらでも足せる。だけど3人で完結して出来ることを追求するのが、自分の中でも面白味があって。縛りがある方が、いろいろとアイデアも駆使しないといけないですしね。

それにピアノトリオとはいえ、生ピアノだけじゃなく、エレピやシンセを使ってもいいし、最近ではボコーダーも使ったりしているので。表現としても可能性の広がりがある。それでいて、ドラムとベースのビートをしっかりと際立たせることもできる。曲によってはゲストボーカルを入れているけれど、演奏に関しては、あくまでトリオ編成でやりたいなと。

バンドの音楽性として、レアグルーヴみたいな曲が好きですけど、やっぱりジャズ的なインプロビゼーションの要素も大事にしたいと思っています。むしろ、ライブではそっちの方がメインにはなっているかも。基本的にライブではMCをまったく入れずに、曲をDJのように繋げて演奏していくような感じでやっています。なので、フロアライクでありながら、ジャズが好きな人たちにも演奏を楽しんでもらえるようなコンセプトで続けています」

――メンバーはベースに梅沢茂樹さん。ピアノには、初期は竹内大輔さんが参加。2020年からはジャズピアニストの中林万里子さんが加入しています。

「梅沢さんは元々、在日米軍基地内のクラブバンドでバリバリにセッションしてきた人なので、ブラックミュージックに強いんです。彼と初めてセッションした時に、自分のバンドをやるんだったら絶対この人をベースにしよう!って思ったぐらい。

中林さんは、ベーシストの関谷友貴くん(TRI4TH)がリーダーで、里アンナさんもメンバーとして参加している〈黒船〉というバンドでドイツへツアーに行った時に、ピアノの竹内くんの代打として彼女が演奏して。その時に演奏が素晴らしいと思いました。その後、彼女のリーダーバンドも観に行って、ソロはもちろんアレンジのセンスも僕の好きな感じで、一緒にやってみたいとずっと思っていたんです。

竹内くんがTRI4THの活動が忙しくなってきたことで脱退することになり、中林さんにメンバーとして加わってもらいました。バークリー音楽大学を出ていて、ジャズだけではなくポップスのフィールドでも活動している方で。歌も歌えるので、ボコーダーも導入できました。彼女が参加してくれたことで、Nautilusのサウンドもぐっと幅が広がったと思います」

 

独自の作曲とカバーのアレンジを続ける多作家

――2015年の1stアルバム『Nautiloid Matter』以来、ほぼ1年に1枚のペースでアルバムを発表し続けてきたのは凄いですよね。

「自分の作曲に、それほど自信があったわけじゃないんですけど、発表できる場があるならチャレンジしていきたいっていう気持ちがあって。また、これまでの作品でカバー曲をいくつもやってきたんですが、自分がずっと好きだった様々な曲を、自分のアレンジでどうやって変えていけるかっていうところにも魅力を感じて、そこにも挑戦してきたつもりです。そうして作品を出し続けることで、自分にとっても自信に繋がりました」

――作曲はどのように進めていくんでしょう?

「実は僕、ギターで作曲することが多いんです」

――ドラマーだし、ギターレスのピアノトリオなのに、ギターで作曲しているというのは意外ですね。

「そうなんです。ギターをボロボロ弾いて、〈このコード進行いいな〉みたいな感じで探っていくところから始まるっていう。もちろんそこで、メロディも口ずさんだりしながら。だから多分、他の人の作り方とは違うと思います。ピアノも習ってたわけじゃなく、かなり独学で全部やってきたので。

初めの頃は、そうやって書いた曲を、メロディとコードだけの、簡単な手書きの譜面に起こしていましたね。そのうち、GarageBandとかのDTMソフトを使いはじめて。それも独学ですけど、今は大体のアレンジはDTM上で仕上げています。やっぱり10年も曲を作ってると、少しずつ上達はしてきたのかな」

――たとえばオリジナル曲やカバー曲は、デモはどの程度まで佐々木さんが作り込んでいく感じなんですか?

「基本的には僕が9割5分ぐらいアレンジまで組み立てたデモを作って、譜面も書いていってメンバーに渡して。そこで3人で音を出して、細かい部分を詰めていく感じです。一応、バンド形式ですけど、レコーディング音源については僕のやりたいことにメンバー2人を付き合わせているというか。

さっきも話したように、ライブではそれぞれのソロや、3人でのインプロビゼーションの要素に重点を置いていて。2人とも楽しんでくれているので、いい関係にはなっているかなと思います」