NHK大河ドラマ「西郷どん」メインテーマに歌で参加の里アンナとドラマー佐々木俊之による異色ユニット
ポップスやミュージカルなど様々な歌の世界を渡り歩いてきた里アンナ。ここ数年はルーツである奄美シマ唄の歌い手として改めて評価が高まる彼女だが、今年はNHK大河ドラマ「西郷どん」のメインテーマへの参加でますます注目されている。そんな里と、異色のインストゥルメンタル・ユニット、Nautilusを主宰するドラマー、佐々木俊之によるデュオ・アルバムが本作。里の歌声と三線に竪琴。そして佐々木のドラムだけというシンプルな構成による異色作というべき仕上がりだ。
曲は「西郷どん」のオープニングテーマを除く11曲全てが奄美シマ唄。それに里はあくまでも唄者として立ち向かう。そこに佐々木のドラムが加わるわけだが、佐々木が打ち出すビートが里の唄におもねるようなところは一切無い。あくまでも佐々木のビートで歌声を受け止めている。聴いていると並列に存在する二つの世界が脳裏に浮かんでくるかのようだが、それでいて二つの世界は密接に結びついている。そんな矛盾ともいえる世界を彼らは実現しているわけだ。
里が奏でる楽器の使われ方もまた興味深い。特に竪琴なのだが本作では非常に冷静に、ミニマルに同じフレーズを繰り返す。普通ならシマ唄側に寄り添うべき竪琴がここで唄とドラムの中間点に位置することは、先に書いた〈並列でありながら密接に結合する世界〉を構築する上で重要な要素になるのではないか。
それにしてもだ。里の前作『紡唄』から比べても彼女の歌声は透明感を増し、さらに力強さも備えてきた気がする。こうした異色な音の構成だからこそクローズアップされるのかも知れないが、里の歌声がさらに進化し、言葉では表せないなにかを纏っていることは確かだろう。
もちろん「西郷どん」のテーマ曲で里のことを知り、このアルバムを手にする人も多くいるだろう。そんな人をも奄美シマ唄の魅力に引き込むだけの力がこの作品にはある。2人がアルバム・タイトルに込めた想いは、そこにも滲み出ている。
LIVE INFORMATION
里アンナ × 佐々木俊之 コンサート
○9/15(土)マリナート 小ホール(静岡)
○9/16(日)大江能楽堂(京都)
琉球フェスティバル2018
○9/23(日)日比谷野外大音楽堂(東京)