
Nautilusの新たな10年が始まる
――なるほど。そして結成10周年を迎えた2024年、9作目のアルバムとなる『Sunrise』がリリースされました。
「一応10周年になるので、ある種、今までの集大成みたいな作品が出したいなっていう思いもあって。ここで一つの区切りをつけて、この先の新しい10年が始まる――。そんなイメージを示唆したいなと思いました。アルバムタイトルにもなっているイントロダクションの“Sunrise”や、10曲目に“Last Song”という曲を置いて。別にこれでバンドが終わりってことではなく、そこからまた始まっていくんだっていうストーリー性を意識してみました。
僕は、そういうストーリー性のあるものに惹かれるところがあるんです。たとえば1stからの初期のアルバム3枚は、勝手に3部作って呼んでるんですけど、3枚目の一番最後の曲で、1stアルバムのイントロダクションに戻るみたいな。ちょっと映画を観ているような感覚で、自分たちの音楽を聴いてもらえたらいいなと思っているんです」
――最新作の『Sunrise』でも、ソウルジャズにアレンジした“Love Theme From Spartacus”のような映画音楽のカバーが披露されていますが、佐々木さん自身も映画好きなんですか?
「はい。映画が好きで、好きな映画のテーマ曲や挿入歌も、これまでいくつかカバーしてきましたね。なんていうか、わいわい盛り上がるみたいな感じよりは、じっくり聴いてもらうのが好きなのもあって。ライブを観ている時も、ふと映画を観ているような気分になってほしいというのがあるんです。だから、ライブ中にMCを入れないようにしているのも、途中で現実に戻っちゃうのを避けたいっていうか、セットリストがストーリーのように繋がっているものにしたいっていう気持ちが強くて。アルバムの曲順についてもそうですね。なるべく曲と曲の間も空けたくないぐらいなんです」
聴きやすすぎないダークさと毒気
――なるほど。ここからアルバムの収録曲について聴いていければと思います。まず、先ほど話に出たイントロダクションの“Sunrise”は、シンセの荘厳な広がりのあるハーモニーが、まさに物語の始まりを想起させて。そこにドラムとベースが疾走する感じで重なってくる。一聴すると水と油のような違和感がありながらも、それがだんだんと気持ちよい感覚に聴こえてくるのが面白いと思いました。
「まさにそういう感じを狙いました(笑)。すべてが綺麗に整っているのではなくて、どこか崩れていたり。あと、聴いていてどこが拍のアタマかわからないようなビートも好きだったりするので。それが、だんだんとわかってくることで気持ちよさを感じるというか。
どのアルバムにもあるんですけど、聴きやすすぎないようにしたいっていう気持ちはあるのかも。どこかダークというか、毒気みたいな要素がないと、僕にとっては、音楽としてちょっとつまらないなと思うので。そうじゃないとBGM的な感じになってしまうので、ドラムやベースの音色についてもかなり意識しています」
――そういう意味では、アルバム全体を通してドラムもベースも結構ゴリゴリしていますよね。
「3人しかいないので、どうしても他のバンドと比べても、ドラムとベースの役割というか存在感がちょっと大きくなるし。そこもこの編成の面白さですね」
――続く“Life feat. Emi Tawata”は、最初に聴いた時にデズリーのカバーと気付かなくて。〈どこかで聴いたことある曲だけど、これなんだっけ?〉って思って、後からデズリーのカバーか!と(笑)。
「原曲とはキーもまったく違いますしね。そういうアレンジも、僕がまさしくやりたいことで(笑)。
選曲については、リリース元であるレーベルURBAN DISCOSのプロデューサー、鈴木庸介さんから提案があって。ここ数年、7インチに関しては彼もアイデアを出してくれていて。以前はほぼ100%僕がカバー曲を決めてたんですけど、自分が思いつかなそうな曲も取り入れたら面白いんじゃないかというのもあって。
この“Life”を取り上げることが決まった時に、歌は多和田えみさんがいいんじゃないかということになって、前作に続いて参加してもらいました。それが、想像を超えたいい歌唱で。コーラスワークも全部えみちゃんが考えてくれているんですけど、びっくりするぐらい素晴らしかったですね」