
〈Do you remember?〉がテーマ
――ちなみに“September”はどうやって思いついたんですか?
「初めから脚本に入っていた唯一の曲が“September”です。映画は9月に始まり9月に終わるので、単純にその理由からファンク好きのパブロが〈ふたりの歌〉として選曲しました。その後、冒頭の歌詞〈Do you remember?〉が映画のテーマそのものだということに気付き、さらに9月21日は私たちの一人娘の誕生日ということもあって、興奮しました」
――そのほかにもT・ラ・ロック、フィーリーズ、レーガン・ユースなど80年代中頃のNYでかかっていたであろう楽曲が劇中でたくさん使用されています。ラスカルが愛聴しているウィリアム・ベルの“Happy”も耳に残りました。
「ラスカルの年齢的に聴いていてもおかしくなく、彼のスタイルとキャラクターを象徴する歌を探していたところ、アート・ディレクターのホセ・ルイスが“Happy”を勧めてくれました。文字通りのハッピーな曲で彼の人柄にピッタリですよね」
――〈ハマった!〉とガッツポーズをしたような選曲はどれですか?
「ラスカルがロボットを再生させるシーンで使ったブッカーT & ザ・MG’s の“Hip Hug Her”です。出来上がった絵コンテ動画にこの曲を付けたときはテンションが上がりました。あとクライマックスの“Septermber”が上手くいき、アース・ウィンド&ファイアからOKが出たときにはガッツポーズが出ましたね。パブロのお気に入りは、ドッグとロボットが海水浴する場面の、ピーター・べンスによるピアノ版“Septermber”です。これを聴かせたとき、彼は涙していました(笑)」


――原見さんとパブロさんの「ロボット・ドリームズ」に続く新作はどんな作品になりそうですか?
「2023年5月のカンヌ映画祭から始まったプロモーション行脚の最終地が東京でした。それが去年の11月だったので、ようやくパブロが新作の脚本に取り掛かりはじめたところです。次は実写映画になりそうです」
――最後にタワレコのユーザーやサントラを手に取っている日本のリスナーにメッセージをお願いします。
「スペインにはタワーレコードがないので、とても懐かしいです。若い頃、大阪ミナミのお店に通いました。ぜひサントラでスペイン随一のメロディーメーカー、アルフォンソの心に響く音楽を堪能してください。“Septermber”が入っているのは日本盤だけですよ! 最高です!」
パブロ・ベルヘル監督の2012年の長編映画「ブランカニエベス」(松竹)
「ロボット・ドリームズ」に使用された楽曲が収録された作品を一部紹介。
左から、フィーリーズの86年作『The Good Earth』(Coyote)、ブッカーT&ザ・MG's の67年作『Hip Hug-Her』(Stax)、ウィリアム・ベルのベスト盤『The Man In The Street: The Complete Yellow Stax Solo Singles 1968-1974』(Ace)、T・ラ・ロックの87年作の日本独自編集盤『Lyrical King +7』(Fresh/OCTAVE)
アルフォンソ・デ・ヴィラロンガの作品。
左から、2020年のサントラ『Nieva En Benidorm』(Quartet)、2020年作『Hors De Saison』(Satelite K)
MOVIE INFORMATION
「ロボット・ドリームズ」

第96回アカデミー賞長編アニメーション映画賞ノミネートを果たし、アニー賞、ヨーロッパ映画賞、ゴヤ賞ほか名だたる映画賞を席巻。孤独なドッグと、その元へやってきたロボットとの友情を描き、世界中の批評家と観客から愛された本作。監督を務めたのはヨーロッパを代表する名匠パブロ・ベルヘル。アニメーション映画は初挑戦ながら、切ないながらも温かく、観るものの心を揺さぶる類まれな傑作として結実させた。
大都会NY。ひとりぼっちのドッグは、孤独感に押しつぶされそうになっていた。そんな物憂げな夜、ドッグはふと目にしたTVのCMに心を動かされる。
数日後、ドッグの元に届けられた大きな箱――それは友達ロボットだった。セントラル・パーク、エンパイア・ステート・ビル、クイーンズボロ橋……NYの名所を巡りながら、深い友情を育んでいくドッグとロボット。ふたりの世界はリズミカルに色づき、輝きを増していく。
しかし、夏の終わり、海水浴を楽しんだ帰りにロボットが錆びて動けなくなり、ビーチも翌夏まで閉鎖されてしまう。離れ離れになったドッグとロボットは、再会を心待ちにしながら、それぞれの時を過ごす。やがてまた巡りくる夏。ふたりを待ち受ける結末とは……。
監督・脚本:パブロ・ベルヘル
原作:サラ・バロン
音楽:アルフォンソ・デ・ヴィラロンガ
音楽監修:原見夕子
美術:ホセ・ルイス・アグレダ
配給:クロックワークス
(2023年/スペイン、フランス)
https://klockworx-v.com/robotdreams/
EVENT INFORMATION
「ロボット・ドリームズ」ファンミーティング
2025年1月31日(金)タワーレコード渋谷店 6F TOWER VINYL SHIBUYA
開始:19:00
出演者(予定):パブロ・ベルヘル監督/高橋芳朗
観覧自由
https://towershibuya.jp/2025/01/14/208781