個性派アーティストを魅了する影響力
そんなTommy february6の、デビューから20年の月日を経ての人気再燃だが、熱狂しているのはTikTokの若者たちだけではない。ドージャ・キャットはTommy heavenly6の“Wait till I can dream”をXでシェアし、TWICEのナヨンがInstagramにTommy februrary6インスパイアの写真をアップしている。また、チャーリーxcxは昔からJ-POPを愛聴しており、あるインタビューではフェイバリットとしてPerfumeとともにTommy february6の名前を挙げたこともある。
日本でもラッパーのvalkneeが、ラジオや連載にて自身のTommy愛を語っている。みな一癖も二癖もあるアーティストばかりだが、Tommy february6の世界観は、そんな個性派たちも魅了するだけの独創性を持っているとも言えるだろう(ところで清 竜人の、曲名に〈♥〉を多用するスタイルは、Tommy february6の影響だったりするのだろうか?)。
そして今回のバイラルヒットを受け、2009年までの所属レーベルであったソニーはTommy february6公式TikTokアカウントも昨年9月に開設し、過去のMVを次々とアップしている。更に、今年7月にはfebrurary6/heavenly6名義それぞれの1stアルバムがアナログでリイシューされるなど、いよいよ〈Tommy february6再評価〉の機運は高まりつつあるのだ。
アニメ、漫画、kawaii文化との高い親和性
現在のバイラルヒットの要因には、そもそも“Lonely in Gorgeous”が矢沢あい原作のアニメ「Paradise Kiss」の主題歌であること、即ちYOASOBIやCreepy Nutsと同じく〈タイアップしたアニメの国際的なヒット〉という背景があると考えられる(YOASOBIらと違い「Paradise Kiss」は旧作であり、それをチェックしているのは海外のアニメ・日本文化マニアの中でも、よりマニアックな層ではあると思うが)。実際、TikTokにおける“Lonely in Gorgeous”を使った投稿動画も「Paradise Kiss」の登場人物を意識した髪型やメイクを紹介する内容のものが人気なようだ。
ちなみに「Paradise Kiss」以外にもアニメとのタイアップは数多い。ブリグリ~heavenly6名義も含めれば「銀魂」や「機動戦士ガンダム00」等の主題歌も歌っているし、「ポケモン」や「パワーパフガールズ」、サンリオとのタイアップも行っている。アニメ・漫画~kawaiiカルチャーとの親和性の高さも、Tommyの特徴のひとつと言えるだろう。
と言っても、再ヒットの要因はアニメ・漫画との関連だけではなく、川瀬智子のセンスとキャラクター性、世界観の魅力、何より楽曲のキャッチーな充実度があってこその結果だろう。
個人的に、地味ながら好きな曲が“HEY BAD BOY”。プリンス風のシンセリードとリンドラムがたまらない、これぞ80sシンセポップ~商業ニューウェーブ!なテイストに満ちており、MVなどは無いものの、是非聴いて欲しい一曲だ。