強さが欲しいだけ
リード曲“あふれ出す涙”を聴いて、〈懐かしい!〉と思った人もいるかもしれない。増子直純(怒髪天)をコーラスに迎え、MAKOTO(JABBERLOOP)を筆頭に分厚いホーンとストリングスを従えたサウンドは、ビッグバンドをバックに歌う70年代歌謡曲のような、「あの頃のレコード大賞の匂いがする」という贅沢な聴き心地だ。
「みんな、“また逢う日まで”(尾崎紀世彦)みたいって言うんだよ(笑)。アプローチとしては近いんだけど、僕のイメージはもっとフォークソング寄りというか、上条恒彦と六文銭“出発の歌”とか、岡林信康“友よ”とか、みんなが一つのことを思ってみんなで歌おうというイメージ。そこに、合唱コンクールみたいな追っかけコーラスとか、沢田研二“君をのせて”のストリングスの感じとか、僕の好きなものを入れていったらこうなったって感じ。この曲はメッセージが大切で、別に反戦歌と捉えなくてもいいんだけど、震災があって、コロナがあって、世界ではウクライナやガザがあってという中で、もっと言うべきことがあるなと思うけど、かといって全部ズバッと言わなくていいし、だから〈強さが欲しいだけ〉と歌ってる。僕にできることはないけれど、ただ僕は強さが欲しいし、勇気が欲しい。SAでは僕が先導者になって〈行くぞ! 立ち上がれ!〉って言ってるけど、俺だって折れる時はあるよって、ソロでは包み隠さず歌っていいのかな?って思うんですね。コロナ禍で誰もがボロクソに折れた時代に、そういう歌を歌いたい気持ちがあったんです」。
アルバムの冒頭を飾る“くちびるに歌を乗せて”は、サイケデリック期のビートルズのエッセンスにソウルフルなコーラス。“BRIGHT SIDE OF LIFE”は、70年代のブルース・スプリングスティーンなどを彷彿させるキャッチーなロックンロール。“流星、飛んでゆけ!”は、ストーン・ローゼズなどマッドチェスターにネオアコを添えたダンス・ロック。1曲ごとにセットが変わる舞台のように、音が変わって気持ちが変わる。音楽って素晴らしいなと、素直な気持ちで楽しめる。
「だから、僕の音楽の歴史を全部切り取ってるんですよ。特にBAD MESSIAHの頃は、ガンズ・アンド・ローゼズっぽいハード・ロックから始まって、その後にストーン・ローゼズとかマッドチェスターのブームが来て、レニー・クラヴィッツが入ってきて、ジェリーフィッシュが入ってきてとか、どんどん吸収してた時代だから。ローゼズが入ったり、ビートルズが入ったり、70年代の歌謡曲だったり、最後に入ってる“華やぐ街はブギーな気分”はプリテンダーズみたいなビートだったり、いろんなアプローチを包み隠さず見せてます。パンクとかロックンロールとかロカビリーは、もうSAでやってるから、そこじゃない自分の音楽人生の片鱗をソロで出せて、これで自分の40年の音楽の歴史をコンプリートしたって感じかな」。