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人生が積み重なってくる

 そして、ジャケット写真をよく見てみる。ショーケンやジュリーを思わせる、昭和の青春映画のポスターのような構図でトンネルに佇む男と、馬渕太成〈新光〉という目立つタイトル。ここにも実は深い意味がある。

 「馬渕姓をちゃんと出したいなっていうのは親孝行ですね(笑)。〈新光〉もそうで、うちの親が岐阜県の大垣で、フードセンター新光っていうお店をやってたんですよ。初めてのソロだし、親父も母親ももう85、6だから、こういうところで親孝行しようかなという気持ちはあって、だからこそジャケットも大垣で撮ったんですよね。なんでここで撮ったか? というと、昔LAUGHIN’ NOSEがやってた『Oi Of JAPAN』(86年)っていうオムニバスにSAが参加して、そこに載ってる写真を撮ったのと同じ場所だから。通称・室のガードっていうんですけど、奇跡的にかっこいい写真が撮れたんで、そのままジャケットにしました。大垣は誰も知らない田舎町だけど、自分の中では大事な町で、大垣の景色を残したい気持ちがあったんですよね」。

 アルバムの中で唯一のバラード“逃げの酒”の、数年前に亡くした実兄との思い出を綴った歌詞にも、彼にとって大切な町の風景が生き生きと、しかし深い悲しみを込めて描かれる。『新光 -SHINKOU-』は、歌詞もサウンドも極めて自伝的でありながら、さまざまな時代の華やかなヒット曲の衣装を纏うことで、多くの人の心に届く魅力がある。同年代にはしみじみと、若い世代には新鮮に、一対一で届く力がある。

 「おもしろいのは、ソロを作ったことで、SAに対してもいい風が吹くんですよね。こっちも完璧にやってやろうぜって思うし、〈ソロができたからバンドはもういいや〉とはならない。最近のライヴもすごくいいし、重い荷物を下ろしたというか、本来のロック・バンドの楽しみ方になれてるし、表現力もついたなと自分で思う。若いミュージシャンに言いたいのは、〈歌が上手くなるのは50歳を過ぎてから〉ってこと。人生が積み重なってくるからね。それだけの思いが詰まったアルバムだから、何せ聴いてほしいし、売れてほしい。売れるって、お金っていうことじゃないですよ。届いてほしいってこと」。

『新光 -SHINKOU-』参加アーティストの関連盤を紹介。
左から、怒髪天の2023年作『more-AA-janaica』(インペリアル)、亜無亜危異の2020年作『パンク修理』(CROWN STONES)、ソウル・フラワー・ユニオンの2020年作『ハビタブル・ゾーン』(BM tunes)

『新光 -SHINKOU-』に参加したアーティストの関連盤を一部紹介。
左から、フラワーカンパニーズの2025年作『正しい哺乳類』(CHICKEN SKIN)、BUGY CRAXONEの2018年作『ふぁいとSONGS』(インペリアル)、ブルーズ・ザ・ブッチャー+うつみようこの2019年作『ブルーズ・ビフォー・サンライズ』(Pヴァイン)、JABBERLOOPの2024年作『NOW』(JUNONSAISAI)