
多様なブルースを奏でた名盤『Messin’ around』
――『Messin’ around』というアルバムについてはいかがですか?
妹尾「当時、ホトケさんはこのアルバムをどう聴きましたか?」
永井「すごいなと思いましたよ。レコーディング前はシカゴブルースをやると思っていたのですが、意外と違う内容になっていて驚きがありましたね。歳月が経つにつれて〈このアルバムはほんとにいいな〉とますます思うようになりました。
音楽的に幅広いですよね。T・ボーン・ウォーカーの曲もJ. B. ルノアの曲もやっているじゃないですか。妹尾君はハーモニカプレイヤーってだけじゃなく〈音楽家〉なんです。ブルースの前はビートルズのカバーバンドをやってベースも弾いていたしね。ベースにもうるさかったでしょ?」
――すごく言われました。「お前、なんでトンクトゥンクって普通に弾けへんのや」って(笑)。
妹尾「〈機関車みたいなグルーヴ〉って最期まで言っていましたね(笑)。その本質が伝わったかどうかはわかりませんが、グルーヴやリズムをすごく意識していたのは確かです」
永井「幅広い音楽性はハーモニカにも出ていて、妹尾君はサックスとかホーンのフレーズも取り入れていたと思う。意識的だったかはわからないけどね。」
妹尾「妹尾さんはボビー・ウーマックとかも歌っていましたからね」
――ルー・ロウルズも歌っていましたね。
妹尾「確かにルー・ロウルズやディオンヌ・ワーウィックをはじめシンガーが好きでした。このアルバムには妹尾さんが歌に専念した曲も収録されていて、昔は〈なんでハーモニカを吹かないんだ〉と批判されたけど、今聴くと〈これは妹尾さんがやりたかった音楽だな〉と思う。今ってギターの人はギターだけを聴くとか、音楽を楽器ごとに聴きすぎている気がします」
永井「さっき〈セッションばかりやっていたらダメ〉と言ったのは、バンドをやったほうがいいからなんです。バンドって自分たちのサウンドを作るじゃないですか。ストーンズもビートルズもそうだし、ブレイクダウンもウエスト・ロードだってそう。吾妻だってバッパーズのサウンドを作った人です。自分たちのサウンドを作ったことがあるミュージシャンと作ったことがないミュージシャンは、やっぱり違います。飛び入りセッションに行って覚えたてのフレーズを弾いていても何も始まらない。だから、下手でもいいからバンドを作ってほしい。
さっき話に出たthe Tigerに期待しているのは、高校生の頃からやっているバンドだからなんですね。俺だって未だにセミプロで(笑)、〈アルバムが出せたらラッキー〉くらいの感じでやっているから、そうやって長くやればいいんですよ」
妹尾「妹尾さんも〈ブルースは趣味でやっている〉と言っていましたね。趣味にしてはやりすぎですけど(笑)、ブルースでお金を稼ごうとは思っていなかった。ブルースをみんなに聴いてほしいとは考えていたけど」
永井「そう。妹尾君は、みんなにブルースを聴いてほしいという気持ちが強かったね」
妹尾「妹尾さんは音でわかりますしね。自分のスタイルを追求しようとは考えていなかったと思います」
永井「どういう演奏スタイルなのかというのは聴く人たちが判断することで、演奏している自分は音楽的にやらなきゃいけないことが多すぎてそれどころじゃない。ライブをやっていても、今日は全曲完璧にやれた!なんて思ったことは50年間一度もないです」
妹尾「若い時もなかったんですか?」
永井「なかった。なんでこのフレーズを弾いちゃったんだろうか?とか、なんであんな風に歌えないんだろうか?とか未熟なことばかり。だからセミプロなんです(笑)。ライブでは気持ちが高ぶっているし……まあ、それもブルースかもしれないけど」